2023年の単行本、とても充実していたと思います。こうして並べると意外性のない結果ですが。年後半あたりから思うようになったのは、私が好きなのはペンタッチや線が綺麗でデッサン・構図がしっかりした、そしてできればアナログ作画のものなんだよな、ということです。
20位 犬とサンドバッグ 2巻 尾崎かおりさん
1巻はやや期待外れだったのですが、2巻は良かったですね。ベテランさんが積み上げてきたものをあらためて確認する感じ。作画もアフタヌーン時代より丁寧でした。
19位ことり文書 3巻 天野実樹さん
とにかく手触りのいい、読んでいて幸せな連載でした。この3巻は特に絵の向上がめざましかったです。いい形で伸びてほしい…。
18位 ただの飯フレです 2巻 さのさくらさん
少しずつweb連載からの単行本を購入というのも増えてきました。さのさくらさん、私はX(Twitter)で知りまして、一枚の絵に落とし込む表情とかセリフのセンスが好きでした。この連載、1巻の時は評判もいいし試しに買ってみるか→ふ〜んという程度だったのですが、2巻になってXでの、必ずしも明るいばかりでもない人生の瞬間を切り取る感じが染み出してきてて、良かったですね。実は2巻を買おうか迷ったんですが買って正解でした。
17位 花園に幹が立つ 2巻 野澤佑季恵さん
1巻が出たときの感想でも書きましたが、この2〜3年の新人さんの中で最も期待してました。この2巻で着実に成長されて、野澤さんのスタイルというのが見えてきた感じですね。それは良いことなんですが、一方でズドンと大化けする可能性は狭まったなとも思います。これからも楽しみにしてますが。
16位 涙子さまの言う通り 2巻 山本ルンルンさん
大ベテランでありながら、この作品でのルンルンさんの変貌ぶりというのは、考えてみればすごかったですよねえ。連載はこれから山場に駆け上がっていくのですが、掲載ペースが予測できないのも込みで、ドキドキです。
15位 イベリスの花嫁 2巻 秋山はるさん
22年の年間ベストでも1巻が5位でしたが、しつこく23年も入賞させます。この作品に関してはとにかく内容に比しての世間の反応のなさに、ひたすら納得いかないですねえ…うーむ。「大人百合」らしいですが、そーいうジャンルなんかどうでもいいから、とにかく読んでよ!と言いたいです。
14位 アビスアジュールの罪人 3巻 冨明仁さん
これも打切りが残念無念な…8位のもそうですけど。この作品、読めばわかりますが、映画や演劇でいうところの「美術」つまり背景や衣装がものすごい入念に準備されていて本当にすごいです。そして冨さんの画力に加え、従来ややお留守だったストーリー展開も読み応えあり、つくづく続いてほしかったです。冨さんまたハルタで描いてください!
13位 宝石商のヒストリティカ 3巻 佐々木つかささん
ハルタから別れての「青騎士」創刊宣言から3年。いちばん嬉しい誤算は若手・新人さんたちの成長のめざましさで、私の主観ではその代表が佐々木さんでした。開始時点ではけっこうクセのある絵がどんどん成長し洗練されていくさま、雑誌で追ってく醍醐味なんですよね。内田善美さんすらどこか連想させる、偏執的なんだけど美麗な描き込み。
12位 開花アパートメント1巻 飴石さん
同時にデビューされた野澤佑季恵さんと比べてしまう癖がついてます。連載を読んでる時点では野澤さんの方が楽しいのですが、単行本としては飴石さんに軍配が…これは1巻未収録の、最近のエピソードが良かったのも影響しています。単に絵が上手いだけでなく、ストーリーテリングでも才能を「開花」させつつある飴石さん。装丁の素晴らしさも加点要因。
11位 東京ヒゴロ 3巻 松本大洋さん
23年の年間ベストでは2巻が1位でした。連載を読んでいた時点では3巻で完結という尺にも予定調和な結末にも納得いかず、松本さんの健康状態のせいだろうか…などと思っていたのですが、最近ネットでの松本さんインタビューなんかを読んでしまい、今はなんとも言えなくなっています…私などがいまさら言う事でもないですが、本当にいい作品をありがとうございました。
10位 守娘 2巻 小峱峱(シャオナオナオ)さん
私が単行本を買うのは雑誌連載で気に入った作品が大半で、見ず知らずの作家さんの本に手を出すのは稀なんですが、この作品は手を出してみて本当に良かったです。漫画としてはこなれてないところもありますし海外(台湾) 作品故の距離感もありましたが、絵が上手いだけでなくメッセージ性もあって。長く読まれてほしいです。
9位 メダリスト 9巻 つるまいかださん
ひとつ前の8巻と対をなす、ノービスA全国大会編。とても面白かったです。面白かったけど…読み進むうち100%好きな作品にはなりきれないなと悟った、節目の巻でもありますね。この巻の焦点は司・いのりの師弟が光の牙城をどう崩すかにあったわけですが、薄々感じてはいたけどこの師弟が熱血すぎて個人的にあまり響かなかったです。私にとってはこの巻はあくまでも亜昼美玖なんです…ああ、あひるの子…。
8位 対岸のメル 2巻 福島聡さん
2巻で終わってしまったのが、本当に惜しくてなりません。今までの福島さんの連載で絵も内容も一番だったと私は思います。唯一無二、としか言えないですね…次回作、心待ちにしております。
7位 贋 まがいもの 1巻 黒川裕美さん
とにかくこの巻は待ち遠しかったです。黒川さんが寡作であるというのもありますが、連載されているWeb雑誌「ハルタオルタ」上での画質が満足いくものでなく。無料とはいえ中々のストレスで、紙で読めてほっとしました。日本画という題材こそ珍しさはありますが筋立ては結構ベタで、でもそれがいいんですよこの作品。経済的には報われない絵の世界に生きて、ご自身や周りの方もいろいろな思いをされてきたと思いますが、それがじわっと滲み出てくるような。
6位 最果てのセレナード 1巻 ひの宙子さん
23年内に2巻も出てそれも面白かったのですが、衝撃度で1巻を選びました。ネットで他の方の感想を拝見して「セリフがわかりにくい」というのがあったのですが、そのわかりにくさギリギリのところで紡がれる言葉、そしてコマが連なって作られる作品世界が魅力です。連載を読んでいて最初の頃は短ければ2巻で終わるか?などと思っていたのですがどっこい、4巻か5巻までは行きそうです。
5位 ピッコリーナ 1巻 大槻一翔さん
伸びてほしい売れてほしいと思ってきた若手さんの一人。この1巻がそこそこ評判になり嬉しいです(3月には2巻目が出ますね)。緻密に設定や展開を考えて始めたとは思えませんが今のところ結果オーライです。なんといっても美しい線!惚れ惚れします。
4位 ダンジョン飯 14巻 九井諒子さん
いまさら説明不要の堂々完結巻です。読み返すと最初の頃はやや頼りなさもあった絵、9年間の積み上げで本当に盤石になり…(巻末にアシスタントさんへの謝辞もありましたが)背景も時期によって結構変わっていたのが後半数巻はビシッと安定して。スラスラ〜と読めちゃいますがすごいですよこれ。イヅツミが各人と話すことで各々の道が定まっていく話、繰り返し読んでます。
3位 帝都影物語 3巻 比嘉史果さん
この3巻はひたすら愛おしくて、捨てられません。ググッと成長されて絵の魅力が極まりました。コミックナタリーの「ハルタWeb原画展」に3巻からのカットが比嘉さんの解説付きで紹介されてますが、ここまで考えて描かれてるんだなあ…と軽くショックでした。
2位 司書正 1巻 丸山薫さん
絵も素晴らしいのですが、時間をたっぷりかけて練り上げた世界観、全貌が見えてこない謎の奥深さが最大の魅力です。連載が載っているハルタ、絵は強いのですがストーリーでぐいぐい引っ張るタイプが少ないのが弱点です。そういう面でもこの作品の存在はありがたいです。
1位 あかねさす柘榴の都 3巻 福浪優子さん
ペンタッチ・構図の美しさ・セリフや表情の切り取り方。そしてどちらかというと「乾いた」心理描写だったのがだんだん内面に踏み込んでいった、この巻での作風の変化…とにかく好きで。本当に連載でこれを追えて素晴らしい装丁の単行本でも愛でられて、幸せでした。