2025/04/29

ハルタ123号


 新連載は池袋万里さん「心霊写真密売マニュアル」1作。丸山薫さん「司書正」は単行本作業のあおりで短かったですが今回も面白かったですね。

虎は龍をまだ喰べない。40話 一七八ハチさん


 深翠と黒蘭の…しっとりしていながら微かに不穏さが漂っている、そう…こういう話が私は読みたかったんです!ここのところ、あれこれキャラが増えすぎて読んでて疲れてました。そして卵!前回から卵が出てきたんですが今回、えっ?そうなるの?前回の後半があまりにも単行本ラストのヒキっぽかったので5月に出る5巻はここまでかなと思い込んでいましたが、スケジュール的には今回の可能性の方がありますね…どちらがラストかで単行本読者の読後感はかなり変わりそうです。

先生、今月どうですか 47話 高江洲弥さん


 5年弱前に始まったこの連載もここまで来ました…おそらく6月ぐらいで最終話です。この連載、始まって何回かは本当にすばらしい、私にとって特別な連載でした。今回私を魅了した第1話のシーンが今回繰り返されて…詳しくは言えませんが。先生、無精髭も最後のシーンもかっこいいじゃないですか!

香港ネクロポリス 2話 越谷美咲さん


 今回も絵がとても充実してて面白かったですよ。越谷さんちょっと緩めた絵も描けるようになって幅が広がりましたね。

極楽にはまだ早い 3話 天野実樹さん


 まだ3話目ですが、ずっと前からやっているような安定感。主人公・雪成の表情も変化が出てきて、少し「ことり文書」を思い出す瞬間もありました。

11番目のねこはねね 9話 はりかもさん


 ずっと「絵は達者なんだけど載せる雑誌まちがえてないか?」と思ってましたが、今回すんなり読めました。5月に1巻が出ますね。

瑠璃の宝石 35話 渋谷圭一郎さん/ハクメイとミコチ 122話 樫木祐人さん



 両作品、読み切りをはさんで連続しての掲載順で、なんとなく内容も被ってる感じだったので合わせての感想です。こういう作品同士の思わぬ相互作用って雑誌で読んでると時々遭遇する楽しみですね。特にハクミコは先月に続いて面白かったです。

狼よ、震えて眠れ 7話 犬童千絵さん


 6月に単行本1巻が出ます。派手さはないんですがfellows!初期からのキャリアを感じさせます。犬童さんや高橋那津子さんのような生え抜きの作家さんはハルタの宝です。

24年に買って良かった単行本10冊


 24年は新規開拓がはかどらず、23年のベストとあまり変わりばえしないラインナップになっちゃいましたかね…相変わらずハルタ系メインです(購読しているアフタヌーンの単行本が1冊だけというのは自分でも意外でしたが)。10作中、2巻が6冊というのは期せずして、です。

10位 夏目アラタの結婚 12巻 乃木坂太郎さん


 掲載誌のスペリオールがどんどん自分の好みから遠ざかっていって、連載のクライマックスはこの単行本で読む形となりました。最終巻になってもまだ明らかにされる謎…ストーリー構成と画力の両面で最後までダレず読者を圧倒させた、凄い作品でした。実写映画化もされましたがあまり話題にならなかったのは残念。

9位 エイタパ・ニーチ協奏曲 2巻 あべまりなさん


 この方も青騎士で知ったので、広い意味でハルタ系。ふんわり緩いファンタジー…という路線は1巻と変わらないんですが、ペンタッチが細やかに的確になり、構成も含め着実に漫画が上手くなりました。緩いと書きましたが、ただ緩いだけではないですね。現在連載中の「ルエント幻獣調整師」はよりマニアックな感じですが大丈夫なんだろうか…まあ「あすか」自体あまり売れてる感じじゃないし、いいのか…いいのか??

8位 ピッコリーナ 2巻 大槻一翔さん


 絵の美しさにますます磨きがかかっている…のはいいのですが…薄々わかってはいましたが、ストーリー作りが苦手なのがはっきりしてしまった大槻さんです。でもいいんですよそれは!ついていきます!と思っていた矢先の2巻で終了(大人の事情)…やっと人気が広がってきたと思ったのにぃっ…。

7位 私のブルーガーネット 1巻 秋山はるさん


 2巻のみと短命に終わった「イベリスの花嫁」の後、白泉社メロディに移籍しての1巻。前作の苦味というか閉塞感(いい意味で)は少し薄れて、少なくともこの巻では車窓から入り込む潮風のような(そういうストーリーです)爽やかさも感じます。今作、前よりもセリフが磨かれたというか、決めのシーンで印象的に入ってくるんですよね。編集さんが変わったせいなんでしょうか。隔月誌なので年1ペースですが(そういえばこの年間ベストはスローペースな作品が多い)ぜひ3巻4巻と続いてほしいです。

6位 花園に幹が立つ 3巻 野澤佑季恵さん


 私のエコヒイキ作家さん。連載後半はこちらの事情であまりちゃんと楽しめず、単行本で通して読むことで良さを噛み締めることができました。登場人物たちの気持ちを丁寧に掬い取ってましたし、言うまでもなく絵が素敵です。野澤さんって話の組み立てがどこか理屈っぽいところがあって、そのせいなんでしょうか今いち人気が広がらないんですが、私は応援してます!この連載ですごく成長したと思います!次の連載も待っております!

5位 司書正 2巻 丸山薫さん


 23年のベストにも入れてまして、どうしようかとも思いましたが…入れざるを得ないです。なんたって面白いですから。この巻、衝撃の展開というよりはタメの巻という感じですが、空間的・時間的な拡がり・厚みが出てきました。最近出た3巻もけっこう話題になってるようですし、ぜひこのまま順風満帆で行ってほしい…。

4位 贋 まがいもの 2巻 黒川裕美さん


 あーこれも入れるしかないわあ。「夕凪に舞え、僕のリボン」も評判は悪くなかったと思うのですが部数的にはさほどでもなかったのかな?ですが今作、勢いがついてきたんじゃないでしょうか!1巻の、追い込まれてやむなく贋作を…という心境が、この2巻の最後の方では変わりはじめてます、はっきりと。絵も1巻以上にいいんですよね…でも(3巻収録分の)連載の現在形はやや淡白な絵になってきてるのが少し気がかりです。

3位 八百万黒猫速報 2巻 浅井海奈さん


 この作品、連載前半はなかなか調子に乗れずもどかしさを感じていたのですが、この2巻で浅井さんの絵は大きく花開いたと思います。前に書いた感想の繰り返しになりますが、本当に他の誰にも描けない彼女だけの絵なんですよ。ストーリー面でも、追う側と追われる側の狭間で葛藤する主人公というのは初連載の「藍鉄とポピー」とも共通していますが、より生々しく凄絶なものになっています。そして不知火の凶々しい美しさよ…!商業的にウケるかというと正直厳しいのかもしれませんが、残ってほしいなあ浅井さん…。

2位 ホテル・ローレルの渡り鳥たち 2巻 赤河左岸さん


 最近メインエンジンが剥がれてどこかへ飛んでいった青騎士ですが、その創刊で私が得られた最高のものの一つがこの作品だったのかな、と思います。1巻の時から絵は素晴らしかったのですが、なかなか話の構造がわかりませんで、途中で絵だけなのかよこの作品…と思ったりもしました。しかしこの2巻後半で見事にパズルのピースがつながりまして!うわぁ…改めてこれは傑作でした!話題になってない様子なのが不思議というか…もったいないですね。

1位 ヒストリエ 12巻 岩明均さん


 実質的に最終巻、ということになります。展開的にも中身の詰まりまくった巻でした。私は9巻のあたりで一度線が細くなって絵に躍動感がなくなってきてないか、と少し不満を感じていたんですが勘違いでした、この12巻で岩明さんが到達されたレベルを目にしてしまうと。何年も前からネットでは描けないなら別の絵師さんに描いてもらえとかずっと言われてましたが(AIうんぬんなんて声さえあったような)、もしそうなったとしても私は読みません。いや、そりゃ岩明さんが描かれた続きが読めるものなら読みたいですが。

2025/04/07

ハルタ122号


 軽くボヤかせていただきますが、いま奇数月(3・5・9・11月)の号は読み応えがないんです…現在本誌連載では最も楽しみにしてる「開花アパートメント」「司書正」が載ってない。面白い連載が減ったなあ…と痛感しますが、新しい連載が生まれ育つのを待ちましょう。

極楽にはまだ早い 2話 天野実樹さん


 前回の感想で「雪成と佐一郎の物語」と書いたんですが、今回佐一郎くん出番0コマでオッサンが出てきました。拷問シーンは惨いですが、それとのコントラストで雪成の涼やかな佇まいが一層引き立ちます。「ことり文書」からは想像できないコマもあったりして、天野さんやる気ですね。

香港ネクロポリス 1話 越谷美咲さん


 短期で終わり単行本も出なかった「冥府が来た!」以来の連載。その頃のハルタ巻末には次号予告漫画「ユキと小春」というのがあって、そこで取り上げられてましたそういえば。中国に返還される少し前の香港が舞台。「冥府…」と比べて大幅に画力が上がりましたがオカルトな読み味は変わらず、これからの成長に期待です。

ハクメイとミコチ 121話 樫木祐人さん


 一度しか出てなかったと思うんですが印象に残るキャラ、ひきこもり研ぎ師のハルシナさんとお馴染みイワシ親方の組み合わせ。こういう脇役同士の話というのも近年増えてきました。絵が上手いというのは勿論ですが、樫木さんの脳内で「こういうキャラ」というのが確立してるので少ないページ数ながら満足度が高いです。九井諒子さんもそういうタイプだと思うんですが、仕事だから人格を造形するというより自然にできてしまうんでしょうね。ハルシナの「他人と関わるのはイヤ、でも自分の仕事がどう見られるのかは知りたい」という性格が画像の2コマで伝わってきます。

いやはや熱海くん 30話 田沼朝さん


 個人的に好きなキャラ辻くんに忍び寄る女子!ですがこの子もいい味出てますね。田沼作品には珍しい?陽キャくんもいつの間にか溶け込んでます。

虎は龍をまだ喰べない。 39話 一七八ハチさん


 白状しますとハルタの感想を休んでた24年の間に私の中での優先順位が少し下がりまして…「土龍?火龍?じゃあ次は木龍金龍かよラーメンかよ」という感じにもなってたんですが、今回また緊張感のあるヒキでした。5月には5巻が出ますね…4巻を積んでたので読まないと。

船長、問題ありません!1話 佐藤宮さん


 第1回八咫烏杯受賞者でありながら色々あったせいか掲載が途絶えていた佐藤さんのタイムスリップ転生もの。ふたつ気になったのが何故タイムスリップしたかの説得力が弱いこと・毎号連載なのに1話の時点ですでに絵が隅々まで行き届いていない(主に後半)こと。光るものは持たれている方だと思いますので今後どうなるかですね。

魔女のエデン 26話 ゆめじさん


 意地の悪い揚げ足取りの感想になりますが「ご慈悲」はないでしょう普通…と思いました。ただ考えてみると、ゆめじさんは日本在住の日本人の方だったかと思うんですが、契約されてるのはフランスで日本のMANGA を手広く(集英講談小学なんでもあり)翻訳出版しているKi-oonという会社で、ハルタの編集さんが日本語をチェックできる体制ではないのかもしれません。単行本は日本でも5巻まで出て物語に厚みが出てきて、最後のシーンとか良かったです。