2023/03/27

ピッコリーナ 1巻 大槻一翔さん


 妹と焼鳥屋を営む青年「朗」と、そっくりな見た目の仲間4人を引き連れてそこに通うバニーガール「峰香」の恋。ようやく単行本が出ました。


 大槻一翔さん。2014年12月の読切「噂話(下の画像)」でデビューされたと思います。いくつか読切を発表された後、17年3月のハルタ42号より連載「欅姉妹の四季」を開始。この号で始まった連載3作のうち掲載位置が最後で、当初私も気にしていなかったんですが、中盤以降の伸びが素晴らしかったです。大好きな連載になりました。


 その後担当編集さんについて行く形で青騎士に移籍、21年8月の青騎士3号付属小冊子「青騎士バニー」に収録の読切が「ピッコリーナ」第1話のベースになりました。当初の読切と連載1話として青騎士5A号に再掲されたバージョンでは峰香の顔立ちが異なります(タレ目がオリジナル)。

 この作品、バニーガールと焼鳥という組み合わせのシュールさも面白いんですが、やはり絵の魅力です。漫画の才能は美大卒であれば保証されるとは全く思いませんが、美術の高等教育をしっかり受けられた方でないと描けない領域の絵というのも存在します。流麗な線に目を奪われますが、線だけでいえばそれ以上の作家さんも複数いらっしゃいます。大槻さんの絵はそれに加えてデッサンや構図、そして絵全体の美しさががいいんですよね…。


 と、ここまで褒めましたが、ストーリー展開的に2巻以降、より面白くなるのか?というのはやや疑問で…恋物語って、不安・焦燥といったスパイスがないと物足りなくないですか。大槻さんのこれまでの作品を読んだ感じだと恋愛面の機微という面で不安があります。


 あと期待が大きかっただけに、装丁がちょっと残念ですね。デザインもですが、大槻さんのイラストも表紙・裏表紙ともに「急かされた」感があって。「欅姉妹の四季」の1巻を手に取った時、表紙や目次のイラストを見て「この人はコマ漫画より一枚絵の方が資質的に合ってるんじゃないか?」と思った記憶があります。青騎士7A号の表紙イラストを見れば分かる通り、もっと描ける方なんですが。


2023/03/26

ハルタ102号


 この号から税込748円→825円に値上げしたハルタですが、すさまじくお買い得であることに変わりはありません。みっっっちり中身詰まってます。

花園に幹が立つ 5話 野澤佑季恵さん

 34ページ中、見開きが2つあります。それだけでなくコマ割りや構図が激変と言っていいぐらい多彩になりました。話の方はラッキースケベ的シーンまであり…認めたくないけどやっぱりハーレム漫画なのか…。あっ11月に始まったばかりですが、早くも5月に単行本1巻が出ますので!

ことり文書 25話 天野実樹さん

 惜しまれつつも、いい空気を保ったままの晴れやかな最終話でした。やっぱり小鳥と白石の話だったんだなあ…と再認識。最終3巻は4月発売です(この機会に私も1巻からまとめ買いの予定)。

対岸のメル  7話 福島聡さん

 読切として発表された1話の時点ではまったく構想にはなかったと思うんですが、3億円の話とシャボン玉男をここで見事に繋げてきまして、このストーリーの構築力すげえ…と改めて脱帽です。

犬火の兄弟 1話 吉田真百合さん

 絵柄もずいぶん見やすくなって今度の連載はわりと明るい感じかな〜などと思っていた私が甘かったです。またも復讐譚!コアは全然変わらねえ!「ライカの星」と違い今度は短期集中連載ではないので、アンケート次第で長く続くかもしれません。

黒巫鏡談 2話 戸川四餡さん

 短期集中といえばこの作品も全3話です。八咫烏杯受賞の戸川さん。絵はまだまだと思いますが、ひと目でこの方とわかる個性がありますね。

生き残った6人によると 27話 山本和音さん

 巻頭でした。4巻最後で登場したトモコ・アンダーソン教授も溶け込みつつありますが、ゾンビ側にもヤバいのが登場で、モールを離れなければいけないかもしれません。

虎は龍をまだ喰べない。 20話 一七八ハチさん

 西の地を目指す白麗と碧童。ひさびさの水入らずかと思いきや邪魔者が。爬虫類率けっこう高いですね。アクションシーンがダイナミックで良かったです。

ダンジョン飯 92話 九井諒子さん

 4月で終わりということはなさそうですが、秒読みです。懐かしい魔物色々出てきました。

あかねさす柘榴の都 21話 福浪優子さん

 夏樹のモヤモヤ、晴れました。線が細くなった気がしましたがペンを変えたんですかね?

いやはや熱海くん 10話 田沼朝さん

 苦手と思った相手の別の一面。絵もここまで良くなれば安心して楽しめます。

ウスズミの果て 11話 岩宗治生さん


 最初の頃は同じトーンで淡々と続いてる感じでしたが、今回絵も話も動きがあって面白かったです。

2023/03/25

対岸のメル 幽冥探偵調査ファイル 1巻 福島聡さん


 2019年秋に連載が終わった「バララッシュ」。私は迷った末に1年近く経ってから単行本(全3巻)を買い、通して読みました。3巻の途中でページを繰るのを止めて、こう思ったんです。「ハルタに載った全作家の全作品中、いちばん出来がいいのって…これじゃないか?」福島聡さん、とにかく漫画の上手い方です。

 ともに小学生、お寺の息子の和気谷清春が不登校の白河メルと出会うところから物語は始まります。メルは題名にもあるように「対岸」の世界が視える巫女のような存在で、二人はコンビを組んで亡霊たちを成仏させるべく謎を解いていきます。

 福島さん、とても才能ある方ですがその才が走りすぎというか中二というか、読者視点ではとっつきにくさもありました。ですが「バララッシュ」はとてもストレートな青春ものでしたし、この「対岸のメル」もシンプルな少年少女の探偵物語として楽しめます(でも常に不穏さがつきまとうのが福島さんです)。

 個人的にこの作品の最大の魅力は絵ですね…掲載誌ハルタの事情なのかどうか年6回しか掲載されませんが、そのぶん丁寧に描かれてます。アニメーター志望(追記:アニメーター出身と当初書きましたが、調べ直したら私の勘違いでした。失礼いたしました)だった福島さん、手は速いのですがややガサガサした感じの線だったのが余裕を感じる作画に変わってます。

 なお、この作品は21年9月に第1話が読切として載り、翌22年3月から2話以降が連載になりまして、1話の最後の部分が雑誌掲載時と単行本で異なってます。初出では二人は大学生に成長してました(下の画像)。

2023/03/22

月刊アフタヌーン23年4月号


 「ヴィンランド・サガ」「波よ聞いてくれ」は休載です。

メダリスト 32話 つるまいかださん



 ホラー漫画でした…。読んでいてある漫画のタイトルが頭に浮かんできまして、「あしたのジョー」なんですけど。何が言いたいかというと、光は(少なくとも一時的には)物語から「消える」可能性があるなと思いました。だってこんなレベルで競い続けたら強さのインフレが物凄い事になってしまいます。


 同じコーチに指導される(と認識している)夕凪が抱いた思い。嫉妬だけでなく指導のあり方が違いすぎる、その違和感です。こういうところから綻んでいくのでしょう。

クオーツの王国 3話 BOMHATさん



 3年が過ぎ少し大きくなったブルーは天使になるための試験へ。仲間になりそうな男の子とかキレイだけど意地悪そうなお姉さんとか出て来ました。

最果てのセレナード 4話 ひの宙子さん



 4月21日に1巻が出ます。キャッチコピーが「激情サスペンス」なんですが、激情でしたね…小夜ママが。冬の北海道、その格好で大丈夫かと心配になる最後のコマ。

2023/03/13

青騎士12B号


 (12A感想から続き)以前私はtwitterで、この雑誌は最初から長続きさせるつもりがないんじゃないかと書きました。今はそうは思いませんが…青騎士で始まった連載で重版になったのは「音盤紀行」だけだったと思います、この2年で。未来は果して…。

宝石商のヒストリティカ 11話 佐々木つかささん


 4月に2巻が出ますね。どうやら3巻も出てくれるようでありがたいです。不老不死なのかタイムトラベラーか、宝石商の謎とは?

北北西に曇と往け 11話 入江亜季さん


 慧と三知嵩の幼少期。この調子だと10巻ぐらいまで行くんでしょうか。入江さんのことだからわからないけど。

ホテル・ローレルの渡り鳥たち 6話 赤河左岸さん


 ホテルの謎について考え始めた宿泊客たち。

音盤紀行 話数不明 毛塚了一郎さん


 海賊ラジオDJ・ニッキの再登場です。毛塚さん、同人時代の作品集「音街レコード」も重版らしいですね。すごい。

エレナの炬火 5話 小板玲音さん


 2月に1巻が出ましたね。個人的につかみどころのない作品なんですが、絵は上手くなってます。

Devil's Candy 3話 Bikkuri/Remさん


 アクションシーン、いいですね!見直しました。

青騎士12A号


 年6回刊の青騎士、この号で2年経ったことになります。始まった頃と比べ連載の数も増え、危惧していた新人さんの単行本も月に何冊も出て、ずいぶん安定してきたように思います。

 ただ、飛び出してきたハルタと比べて、私の正直な感想はいい勝負をしているとは言えず…仮にハルタがおかしくなった時の「スペア」にもなってないですね…。もちろんfellows!や初期のハルタに比べれば勝ってますけど(12B感想の冒頭に続く)。

転がる星屑ども 1話 有海とよこさん

 9A号にプロローグが載って、期待してました。ただですね、前連載「波間の子どもたち」のプロローグが陰影濃い雰囲気ある感じだったのに、本編が進むにつれてけっこう明るいところもある学園ものになっていって「あれ?あれ?」と思ってるうちにあっという間に終わってしまって、この連載も思わせぶりなプロローグでしたが感想は書かずにいたんです…で、本編が始まったらけっこう雰囲気ちがう!読めないなあこの人…。


 2022年の設定と思いますが、円盤型のポータブルCDプレーヤーとか床に積んだCDの山とか(こういうの若い人にわかるんだろうか…)出てくるのは虚構性を強調してるんでしょうか。どうなるかわかりませんが、とりあえず楽しみ。

ピッコリーナ 9話 大槻一翔さん


 3月20日に単行本1巻が出ます。青騎士の創刊前に出た作家ラインナップに大槻さんがなかったら、青騎士を買ってなかったかもしれないぐらい大槻さんは好きで、本来ならもっとワクテカしているはずなんですが…初デートの最中にドレスにお着替えって…ギャグ漫画でしたっけ?1巻大丈夫か?

ハテンの水槽 1話 柴田康平さん


 始まっちゃいました、「夜な夜な夜な」と並行しての連載が。悪くない滑り出しとは思いますが、やはり1作だけの頃より画面の密度は下がりますよね。どうなるんだろう。

鎮護庁祓竜局誓約課 4話 鵜山はじめさん


 4月に単行本1巻が出ます。絵は上手いんですがそこから先の感想が出てこない…。

針と羊の舟 5話 幌琴似さん


 こちらも4月に1巻出ます。庭師漫画…ではなく、ぬいぐるみクラフト漫画。今回妙な味がありました。

2023/03/06

ハルタ101号


 あくまで私個人の感想ですが、この半年ほどの連載ラインナップに不満がほぼありませんでした。そりゃ載ってほしい作家さんはまだまだいますけど、いわば「満月」の状態でしたが…少しずつ好きな連載が終わりはじめています。後から振り返るとハルタのピークはこの101号だった…となるかもしれません。

帝都影物語 16話 比嘉史果さん


 大詰め…ですねえ…例年5月に単行本が出てきましたが、今年もそうかな(そして最後かな)という気がしてます。比嘉さんの絵、どちらかといえば硬質な線であまりトーンを使わない印象でしたが、少しずつ柔らかさも混じってきてとてもいいです。話も見事、見事です…。

アビスアジュールの罪人 22話 冨明仁さん


 最終話。こちらも入魂の、でも力みのない素晴らしい絵でした。アンケートの数字の結果とは思いますが、人魚と人間の世界が絡みはじめてからどんどん面白くなって来てたので、もっと読みたかったですね。いいラストシーンでした…(追記:単行本3巻はこの3月発売です)。

先生、今月どうですか  25話 高江洲弥さん


 今回、始まった頃を思い出す絵でねえ…絵の調子に振り回されるのが嫌で距離を置いてましたが結局一喜一憂してしまいます。話の方はイケメンくん登場で、邪推すればテコ入れなのかもしれませんが、先生の側の気持ちが点で終わってなかなか線にならなかったので、いいんじゃないかと。たぶん初夏に4巻が出ますが、その次まででしょうか。

開花アパートメント 4話 飴石さん


 もちろん今までも良かったですが、今回グレードアップした気がします。絵も話も大充実。単行本が出たらどういう反響が出るか、楽しみですよ今から。

司書正 12話 丸山薫さん


 1月に出た1巻収録分の後は小康状態でしたが今回大きく動きましたね。丸山さんもツイートされてた通り亀が出てきます!さあどうなるどうなる!

涙子さまの言う通り 8話 山本ルンルンさん


 こちらも1月に1巻出まして、沢渡回ですね…具体的に何とは書けませんが、取調室のシーンとか読み応えありました。やっぱり面白い。

いやはや熱海くん 9話 田沼朝さん


 1月の単行本、作品集の方まで重版とは!こんなこと滅多にないですよ。以前はぶっきらぼうな感じだった線が、だんだん表情を持ち語りかけてくるようになってきました。

ハクメイとミコチ 100話 樫木祐人さん


 帯にドドンとあるように100話で、現行連載中最長寿です。今回91話のダンジョン飯はもういつ終わってもおかしくない展開ですし安泰ですね。意外や旅人スペックが高いはずのハクメイをミコチが凌駕します。

花園に幹が立つ 4話 野澤佑季恵さん


 第1話で1コマだけ出ていた眼鏡っ娘、諏訪さんというのか。気になる終わり方…今回も表情がより生々しくなったり成長中の野澤さんです。

キラキラとギラギラ 11話 嵐田佐和子さん


 平等院編が続いてます(この先生、出番少ないけどいい味出してますよね…)。劇画部分が今回ワイルドでいいです。やっぱり嵐田さん絵うまい!

猫のまにまに 16話 宇島葉さん


 田中クロフォードさん今回も登場。始まった頃より一層表情とか良くなってきて、愛着が増します。

ホテル・メッツァペウラへようこそ 24話 福田星良さん


 ラップランドのクリスマス。巻頭で、すっかり人気が定着しました。

あかねさす柘榴の都 20話 福浪優子さん


 こちらはアンダルシアのクリスマスで…ちょっと絵が粗い気がしました。話の進み具合から見て、3巻完結でもおかしくないですね。

インク色の欲を吐く 11話 梅ノ木びのさん


 喧嘩のあと姉の舞台を観に行くオーブリー。モノトーンの完成されているけど狭い世界で続いてきましたが、今回破調気味ですが広がりが出た印象です。

魔女のエデン 4話 ゆめじさん


 ピリーの逃避行は続きます。一難は逃れますが…このちょっとザリザリした感じの絵、馴染むのに時間がかかりますが悪くないです。