2023/03/25

対岸のメル 幽冥探偵調査ファイル 1巻 福島聡さん


 2019年秋に連載が終わった「バララッシュ」。私は迷った末に1年近く経ってから単行本(全3巻)を買い、通して読みました。3巻の途中でページを繰るのを止めて、こう思ったんです。「ハルタに載った全作家の全作品中、いちばん出来がいいのって…これじゃないか?」福島聡さん、とにかく漫画の上手い方です。

 ともに小学生、お寺の息子の和気谷清春が不登校の白河メルと出会うところから物語は始まります。メルは題名にもあるように「対岸」の世界が視える巫女のような存在で、二人はコンビを組んで亡霊たちを成仏させるべく謎を解いていきます。

 福島さん、とても才能ある方ですがその才が走りすぎというか中二というか、読者視点ではとっつきにくさもありました。ですが「バララッシュ」はとてもストレートな青春ものでしたし、この「対岸のメル」もシンプルな少年少女の探偵物語として楽しめます(でも常に不穏さがつきまとうのが福島さんです)。

 個人的にこの作品の最大の魅力は絵ですね…掲載誌ハルタの事情なのかどうか年6回しか掲載されませんが、そのぶん丁寧に描かれてます。アニメーター志望(追記:アニメーター出身と当初書きましたが、調べ直したら私の勘違いでした。失礼いたしました)だった福島さん、手は速いのですがややガサガサした感じの線だったのが余裕を感じる作画に変わってます。

 なお、この作品は21年9月に第1話が読切として載り、翌22年3月から2話以降が連載になりまして、1話の最後の部分が雑誌掲載時と単行本で異なってます。初出では二人は大学生に成長してました(下の画像)。