2022/12/20

生き残った6人によると 4巻 山本和音さん

 これは傑作です。従来も巻ごとに面白さが増していましたが、この4巻は一段ステージが上がったというか、「山本さんすみませんちょっと舐めてました」と思ってしまいます。


 今巻は対ゾンビの戦いは影をひそめ、7人の中でのぶつかり合いがメインですが、それがもう最高で。20話の梨々とビースト、21話の梨々と雫、そして23話の海と雫・平坂と雫…。7人と書きましたが人数は少なからず変動します。


 山本さんは映画がお好きのようで映画的なカットをよく描かれます。従来はそれがやや作為的に感じることもありましたが、この巻ではそう感じませんでした。それに限らず様々な要素の境目が有機的に溶けあって、ひとつの作品としてのまとまりが強まっています。


 オマケを除けば連載で全部読んでいて、その時も面白かったけど各話がバラバラな感じだったのですが、(これは私の読み手としての能力が低いのかもしれませんが)単行本で読むと各話がシームレスに繋がって、スルッと一気に読めます。連載と単行本で印象がここまで違うのも珍しいです。


 4巻を面白く感じた理由がもう一つありました。24話最後のシーンに出てくる人物。彼女が(そう彼女が)ハルタ100号掲載の25話で爆弾発言をかましてまして、それを通過した目で読むとキャラの言動・表情が「あ…」ってなるんです。素の状態で4巻を読んでからハルタ100号を読んで、もう一度4巻を読むと「味変」が楽しめます。別冊の番外編にはれんれん他いなくなった人たちも出てきますし、買っといた方がいいですよ100号。