2023/09/17

ハルタ107号


 3〜4年前、ハルタの巻末には牧野康平さんの次号予告漫画「ユキと小春」というのがありました。その頃は続々と新連載があったのに今号は読切1作の予告だけ、もうそんな企画も成立しそうにないな…とボヤくつもりで画像を用意したのですが、それどころではなさそうな事に気がつきました。


 「ダンジョン飯」が今号終了ですがそれだけでなく、「対岸のメル」・「極東事変」が108号、「夜の名前を呼んで」が109号で終わります。さらに「ふしぎの国のバード」もあと数回、「山を渡る」「ヴラド・ドラクラ」も終わりが近そうな雰囲気。一方で新連載は短期集中で「本なら売るほど」が始まりましたが本格連載は104号が最後で108号もありません。何かが起きようとしています。

 現時点での私の推測は「2つか3つに分裂」なんですが…人気連載もいくつもあり、それらを終わらせる理由もありません(アシスタント募集の告知も今号ありましたしね)。なんらかの形で続くと思います。ですが今の形でのハルタの発行は思っていたより早く終わりが来る気がします(推測が外れたら笑ってください…私も当たらないことを願っています)。

生き残った6人によると 32話 山本和音さん


 このブログは「ネタバレあり」とお断りしてますのでバラしますが、今回も最後のページで「えっ」と思わせられました。「生き残った6人によると」というタイトル。それが梨々たちの最終的な生存数だと私を含め読者は思っていたわけですが、そうではなさそうな…最初からそいう構想だったのか?というと、たぶん後付けなんだと思います。連載開始前の予告では「パンデミックな6人(仮)」というタイトルでした(最初の緊急事態宣言の頃ですよ)。いやあヒキが巧い!

対岸のメル 10話 福島聡さん


 福島さんには先日X(当時まだTwitterだったか…)でこのブログの1巻感想へのリンクをRTしていただき、ニッコニコで今回書くつもりだったのに、ショックです…通常の掲載スケジュールでは11月に次回掲載のところを10月に前倒して、11月に最終2巻発売とのこと。対峙する敵手のはずのアマネと共にメルが消えた異界に入り込むワキャ君。

ダンジョン飯 97話 九井諒子さん


 12月に13・14巻同時発売というスケジュールも明らかになりましたが、数え間違いでなければ単行本未収録は12話分だったと思いますし2話ほど減ページの回もありました。なので結構な量の加筆がありそうです。4巻収録の16話を読んで「ああ、ファリンが元の姿で戻ってくることはないんだな」と思っていた私でしたが…まあ完全に元の姿じゃないしな。何の不満もない最終回でした。でも九井さんはまだ休めない!

犬火の兄弟 4話 吉田真百合さん


 私の個人的な好みから吉田さんの絵は少し離れているのですが、引き込まれるんですよねえ…可愛さと凶々しさが入り混じった、吉田さんだけの世界です。

いやはや熱海くん 15話 田沼朝さん


 10月の2巻発売に加え「CREA夜ふかしマンガ大賞」1位と順風が吹いてます。私は熱海くんより周りの辻くんや国島くんが好きなんですが、その国島くんに動きありそう?

涙子さまの言う通り 10話 山本ルンルンさん


 思っていたより早く11月に2巻発売です。次号の掲載はないので2巻で終わりということはまずないですね。良かった良かった。

夜の名前を呼んで 31話 三星たまさん


 冒頭書いた通り、109号で終了。単行本5巻は12月発売なんでしょうか。最近ミラの回復が早いなとは思ってましたが…今回一人で街中まで出かけてってます。

ウスズミの果て 16話 岩宗治生さん


 この9月に2巻が発売になりました(岩宗さんには失礼ですが私は1巻が重版されるとは思ってなかったのでびっくりしてました)。いい雰囲気が続いています。

魔女のエデン 10話 ゆめじさん


 単行本の情報が出てこないのは謎ですね…フランスでは3巻ぐらい(追記:5巻まで出てるようです)出てたんじゃなかったかな?見せ方を含め絵が上手くなってきてます。

2023/09/01

青騎士15B号


 Bの表紙は佐々木つかささんです。Aにも載ってる「鎮護庁祓竜局誓約課」がこちらにも掲載ですが、それぞれが短くなってしまいあまり楽しめませんでした。

宝石商のヒストリティカ 13話 佐々木つかささん


 巻頭です。本当に絵が良くなって、もはや堂々とした感じ。成長されました。

音盤紀行 話数不明 毛塚了一郎さん


 2巻まだかな?と思ったら10月に出るそうですね。戦後の横浜、これも一つのメイドさんもの。安心して読めるようになりました。

北北西に曇と往け 13話 入江亜季さん


 好調を維持。けっこう貯まったと思うんですが7巻はまだなんでしょうか。

ホテル・ローレルの渡り鳥たち 9話 赤河左岸さん


 ぶじ1巻も出ました。もう少しページ数が欲しかったかな。

青騎士15A号


 面白かったですし有海とよこさんが表紙で結構でしたが、後ろの方の読み切りね…キャラデザがハルタの某連載と酷似。こういうのを見せられるとハルタと関係改善する気なんかないよ、と言われているようで、悲しいというか情けないというか。

ピッコリーナ 12話 大槻一翔さん


 久々に「鳥朗」が舞台で、この話の本道に戻った感じです。焼鳥とバニーたち…うん、これこれ。

窓辺のリノア 1話 萩埜まことさん


 青騎士のわりと初期から読切をいくつか発表されてきた萩埜さん、その読切のひとつをベースにした新連載です。ドイツ南部を舞台に現実と非現実が入り混じる、謎の多そうな導入。面白くなるかどうかは何とも言えませんが、可能性のある方だと思います。

メガロザリア 11話 みやまるんさん


 「おっ、俺が今読んでるのは本当にメガロザリアなのかっ…?」となったピュアピュア乙女チック(死語)ストーリー。次回からはいつもの調子に戻りそうですが。

夜な夜な夜な 13話 柴田康平さん


 完全復調、と言っていいんでしょうか。ただ絵がシリアス寄りになってきて、元々の感じからは変わってきましたね。そろそろ2巻が出ても良さそうですが。

2023/08/27

月刊アフタヌーン23年10月号


 ツイ…Xで「スキップとローファー」9巻がない!と目にして大きい書店に行ってみたら本当にない!感想を検索すると洪水のように流れてきて、勢いのある漫画は違うもんだと改めて思いました。

波よ聞いてくれ 93話 沙村広明さん



 ギリギリ50代の私には激しく刺さるというか、漫画表現のグサッと何本もナイフが来るやつでした。面白かったですけど。

ヴィンランド・サガ 205話 幸村誠さん


 ミスグェゲブージュ達と対峙し重すぎる決断を下したトルフィン。しかしそれで事が収まるとはとても思えませんねえ…毎回毎回とても充実しています。

最果てのセレナード 7話 ひの宙子さん


 先生、結構ゲスな要求してくるかとも思ったけど違いましたね。そして最後のシーン、律の上司が北海道の大地を踏んでます!

スキップとローファー 54話 高松美咲さん


 9巻の続きで地元訪問中。夏の爽やかな空気、よく出てました。

メダリスト 37話 つるまいかださん


 ジュニア強化選手に選ばれたいのりは海外開催のジュニアGPに向け合宿。美玖は本当にスケートやめちゃったんだ…。

来世は他人がいい 35話(後編) 小西明日翔さん


 回想編は終わりですね。次からまた色々ありそう。

2023/08/19

ハルタ106号


 佐野菜見さんのご冥福をお祈りします。正直「ミギとダリ」中盤までは苦手な方でしたが、新作が読めないのは寂しいです。

 今号も面白かったですが、個々の感想に入る前に今年前半(101〜105号)を振り返ると、最大のトピックは…web版「ハルタオルタ」のローンチでも(個人的には大きかった)「アビスアジュールの罪人」「ことり文書」「帝都影物語」「あかねさす柘榴の都」等の相次ぐ終了でもなく、半年で短期集中を除く新連載が「犬火の兄弟」「悪魔二世」「Servant Beasts」の3作しかなかったことです。fellows!の頃を含め、こんなことは今までなかったと思います(少し前は新連載が4作なんて号もありました)。そして次号も本格連載はない。ダイエットの開始なのか何なのかわかりませんが、何か「曲がり角」感があります。

 私は以前からハルタが仮におかしくなるとしたら世代交代、それも作家さんよりは編集さんのそれじゃないかと思っていたのですが、それに外的要因(紙等のコストアップ・書店等の売場縮小)も加わりました。若手の編集さんも増えましたが、彼らも「手柄」を上げないと生き残れません。気のせいかもしれませんが「編集部内ガタついてない?」と思わないでもない兆候も感じます。2・3年後のハルタは結構違う姿になってるかもしれませんね。

虎は龍をまだ喰べない。 24話 一七八ハチさん


 最終ページで「えええええ!」となった2作、その1。9月に待望の3巻が出ますが、この回が「ヒキ」になるんでしょうか…碧童ちゃん、何やらかしてくれてんの?!

生き残った6人によると 31話 山本和音さん


 最終ページ「えええええ!」その2。7月に無事5巻が出ました(感想まだ書いてない)。まあモールの外に出て、予想できた展開ですが思ったよりヤバそう…そして恋愛面でもフラグが?

ハクメイとミコチ 105話 樫木祐人さん


 こっちは6ページ目から最後まで「えええええ!」。あまり単行本派の方の楽しみを削ぎたくないので、詳細は触れません。めっちゃ面白かったです…回を重ねるにつれ面白くなる。

ダンジョン飯 96話 九井諒子さん


 既にネット等でニュースにもなり結構な方がご存知と思いますが、ついについに次回終了…一時のダークさは薄れ大団円を迎えそうな雰囲気ですが、完全に安心はできません…なんせあの九井諒子だからな!

ホテル・メッツァペウラへようこそ 29話 福田星良さん


 9月に単行本4巻&初の単独サイン会。もうハルタの柱の一本と言ってもいい福田さんです。今回、画像のページが顕著ですがペンタッチが変わって「おや」と思いました…個人的に上手いけどなぁ端正だけどなぁと思っていて、悪い変化ではないです。

八百万黒猫速報 10話 浅井海奈さん


 こちらはデジタル作画に移行ということで、以前よりは人を選ばない?絵に変わりつつあります。アクションシーンねー、いいんですよー、以前の不知火戦も良かったですが!そしてその不知火に拾われどうなる!

花園に幹が立つ 9話 野澤佑季恵さん


 前回ボーダーラインがどうのという話をしまして、今回のっけから水着ぃ〜もうダメだぁ〜となったのですが、(画像のコマではありませんが)メガネっ娘諏訪さんのアップが3つありまして、その表情の描き分けがとても見応えあって、一本取られました。

涙子さまの言う通り 9話 山本ルンルンさん


 掲載に間が空いたので嬉しかったです。沢渡妹に接近…そうなりますよね。

司書正 15話 丸山薫さん



 鄂韡(がくい)回。後半の登場人物、全員困った人たちでした。あっ前半もかな?脇役も手を抜かず描写してて、こういうのが作品のクオリティに効いてきます。

2023/08/12

あかねさす柘榴の都 3巻 福浪優子さん


 「あんたのプロフィールにあるイイマンガって具体的に何?」と聞かれたら、今はこの作品を挙げると思います。デビュー作を読んで気に入りつつも「漫画を続けるにしても知る人ぞ知る感じじゃないかな…」と思ってしまった福浪さんですが、検索すると完結を惜しむ声がたくさん出てきて、私も(何もしてませんが)嬉しくなリます。


 スペイン南部を舞台にしたこの作品を振り返ると、連載が始まったのは21年3月。パンデミック宣言から1年以上経っていました。福浪さんが連載に向け現地を取材できたとはちょっと考えられず、少なくとも前半は(この巻の末尾にも記されていますが)現地在住の旅行関係の方等を経た間接的なものにならざるを得なかったはずで、その点もご苦労があったと思います。でもこの巻でのアルハンブラ宮殿の描写などは直接ご覧になったんじゃないかなという気がしてます(推測ですが)。



 1巻から3巻までを家の新築に例えると、1巻は土台・骨組から1階の外壁ぐらい(この頃は描くのにいっぱいいっぱいな感じもありました)、2巻は2階建のハードウェアが完成まで(めざましく成長されました)。そしてこの3巻はインテリアを整え「住まい」にしていくような、ちょっと違うベクトルを感じました。


 直接的なセリフやモノローグに頼らず読者に解釈させるスペースを空けておくのが「福浪流」だと思っていましたが、この巻のアルハンブラ編以降はそうでもなくなってるんですよね。最初は連載を1話ずつ読んでましたので、19話あたりは少し戸惑いました。


 ですが単行本で通して読んではっきりしましたが、「どこに住み何者になるかを選択する」というのが物語のテーマで、19話の「王女の塔」エピソードもそのためでした。両親を(おそらく事故で)失った夏樹を彼が18になるまでグラナダに迎え入れ、彼の成長を見届けた上で英国に旅立ったアルバ。一度日本に戻ってみた上で改めてグラナダでの生活を選ぶ夏樹。「ゆるい日常異国暮らし漫画」というのも間違いではないですがそれだけでもないよ、と思います。


 連載が5月に終わり、通常なら翌月に出るのが7月になった単行本ですが、おまけもとても充実していて結果としてお得でした。福浪さんも「お遊び」する余裕があったようです。(下の画像は購入特典ポストカードのアップ)。

2023/08/09

帝都影物語 3巻 比嘉史果さん


 比嘉さんの最初の連載「真昼の百鬼夜行」。短編の連作でしたが、回を重ねるにつれぐんぐん伸びて、「これは…!」と期待したものの(私の主観では)突然の終了。4年近くの空白を経て20年8月始まったのが「帝都影物語」です。ヒット作とまでは言えないものの比嘉さんの知名度は格段に上がり、具体名は挙げませんが美少年皇子と影武者というよく似た後発作品まで登場しました(まあ勲章ですよね)。


 比嘉さんの連載が始まったこと自体はとても嬉しかったのですが、最初の頃は「意気込みは感じるけどギクシャクしてない?」とも思いましたし、(今読み返せば必要なエピソードだったとわかりますが)途中不満を覚えたこともありました。


 ですがこの3巻は、繊細な線と素晴らしい構図、装飾性が加味された美麗な絵の面。そして話作りの面でも、「真昼の百鬼夜行」の頃は想像できなかった高みに達しました。特に3巻後半の流れは本当に本当に素晴らしくて、終わるのを惜しむ気持ちより「ああ、ここまでやってくれた」という晴れやかさがありました。


 物語は(あくまでフィクションですが)皇位の継承争い。大人たちの思惑により弟の「冬宮」から命を狙われるようになった「春宮」周辺が貧農の子、一矢を「影」として立てたことで進んでいきます。春宮は影にきつく当たりますが、その理由もこの巻で明らかになりました。帝の御前で「慈悲の心」を証立てることになった春宮(を装った影)に冬宮側の妨害が…。結末はぜひご自身の目でお確かめください。繰り返しますが素晴らしい。


 この3巻に不満を見つけるとすれば「おまけ」がないことですかね…2巻にはあったんですが。でもこの方が余韻を感じられるかもしれません。「もう少し何か」と思われる方、ハルタ100号の付録に収録された「晴鷽」と「荊内侍」のエピソードなんかもあります(まだ新品で入手できると思います)。