2023/04/30

ハルタ103号


 今号、大きなトピックが2つありました。1つは事前告知なしの2作品終了と次回終了の3作品の最終回ラッシュ。ただ悲観するばかりでもないと思うんですよね。今までのハルタであれば次の連載まで2年とか長ければ4年以上待たなければいけませんでしたが、「もうひとつの場所」ができたわけですから。

 WEB漫画誌「ハルタオルタ」。2008年の「fellows!」創刊以来最大の変動だと思っています。吉と出るか凶と出るか、現時点ではわかりませんが。

司書正 13話 丸山薫さん


 ハルタ編集部が用意したキャッチコピーが「SF宮廷劇」。これまでは「ん?SF?…ああ」という感じでしたが、今回(丸山キャラの)トトコみたいに「どうですかどうですか!」と鼻息フンフンしたくなります。もしかしたら、これがこの物語の真のスタートなのかもしれません。

開花アパートメント 5話 飴石さん


 今回も面白かったですね…本当にハルタはこの方に目を留めて正解でした。絵はリアルなんですが、そこを通り越したどこかへ連れていかれる感覚。

帝都影物語 17話 比嘉史果さん


 前回「次で終わりか…」と思わずにいられなかったので「次回、終幕!」のアオリもむしろ「もう1話読ませていただきありがとうごぜえますだ」感があります。美麗なだけでなく今回のようなダイナミックさも獲得されて、比嘉さん本当に成長されました。

教室のアルカイックスマイル 1話 よしかわさとこさん


 短期集中連載です。ここで私は「ハルタ、黒髪ストレートロングヒロイン多すぎ説」を提唱したいと思います…なんのかんの言っても好きですけどね。けっこう絵柄を変えてきまして、雑誌の中でのなじみは良くなりましたが独自性が薄れた気もして、次回以降どうなるかですね。

花園に幹が立つ 6話 野澤佑季恵さん


 どうします皆さん…あと2週間で単行本1巻が買えちゃいますよ…私は無論買いますが!今回幹くんの心理が掘り下げられてました。

八百万黒猫速報 8話 浅井海奈さん


 4月に単行本1巻が出ました。まあ読んでいてこの方がドッと売れるってことはないよな…と思うわけですが、私は好きです。

ホテル・メッツァペウラへようこそ 26話 福田星良さん


 始まった頃から絵は上手かったのですが、最近は読んでいて「余裕」を感じるようになってきたというか、リラックスして読めますね。

2023/04/16

アビスアジュールの罪人 3巻 冨明仁さん


 内容の割にあまり注目された感じでもなく、もったいないなあ…と思っています。冨明仁さんの海洋ファンタジー完結巻。


 人間の干渉を逃れ人魚が深海に築いた国「タツノミヤ」。重罪である人間との接触により捕らえられた歌姫リュウを助けようと、親友ジョーはリュウが恋した人間の青年「雪」に接触し、追われる身に…というのが2巻まで。3巻ではタツノミヤの重臣ハルジオンの奸計を止めようとするジョー達が描かれます。


 冨さんは2006年のコミックビーム増刊fellows!でデビュー(別PN)。08年創刊の隔月誌fellows!で「彼女と彼(下の画像)」を開始しますが3話で終わりました。


 ここで私は「絵、うま!」と気に入りまして、やがて始まった次の連載「玲瓏館健在なりや」にとても期待したのですが…私には絶望的に合いませんでした…もう読むのが苦行で。途中からまともに読まなくなりました。その次の本格連載「ストラヴァガンツァ」本編も冨さんには申し訳ありませんがあまり読んでません。

 ただ恐らく17年頃(fellows!から誌名が変わっての)ハルタの担当編集さんがそれまでのOさんからMさんに替わり「ストラヴァガンツァ」の番外編というのが始まりました。これまで双方の編集さん担当の作品を読んで来て、Oさんはあまり後先考えずその場その場で作家をノセて描かせるのに対してMさんはネームの段階でみっちり練り上げていくタイプだと思っていますが、以後の冨さんの作風は結構変わりまして、編集の存在の大きさを感じます。


 20年秋に始まった「アビスアジュールの罪人」。冨さんのトレードマーク的「女体アピール」を抑え、それまでのまとまりの無さから安定した話の運びに大きく舵を切っています。そしてタツノミヤの造形や人魚たちのファッション等が緻密に描き込まれ眼福です。


 ただ序盤の展開がゆっくり過ぎて話の構造がわかるのに時間がかかったせいでしょうか、連載中の人気は上がらなかったようで、この3巻は急ぎ足の展開となりました(本来は4巻以上のスパンで考えられていたと思います)。


 ですがこの作品での冨さんの熟練のペンさばき、時間をかけて考えられたデザイン。そして「人魚姫」をベースにしながら海洋活劇として大きくアレンジされたストーリー。逸品だと思います。

2023/04/01

月刊アフタヌーン23年5月号


 アニメだドラマだと賑やかな表紙です。真ん中あたりに「メダリスト」「最果てのセレナード」が続けて載ってまして、やられました…衝撃度では先月のハルタを上回りました。

最果てのセレナード 5話 ひの宙子さん


 静けさが、こわい…冷気が染み込んできます。ひのさん、個々の絵だと不満もあるのですが、「流れ」で読ませる方です。コマの中でのフキダシの配置の流れ、そしてページの連なりの流れ…これ読むことにして本当によかった。今年を代表する作品の一つじゃないでしょうか。1巻は4月21日発売!

メダリスト 33話 つるまいかださん


 感想書くのに読み返してたら、おじさんちょっと泣いちゃったよ…よくもまあここまでザンコクな話を思いついて描けるな…でもこれがフィギュアの世界なんですね。新潟のクラブ所属、阿昼美玖。封印していた4回転を跳んで食い込んでくるかと思いましたが。全国大会後の展開の準備としてジュニアの面々も出てきました。


来世は他人がいい 32話(後編) 小西明日翔さん


 前回休載で次回も休みだそうですが、個人的には全然OKです。とにかく絵が充実してるので、急いて薄まるよりは。父親の死の真相を知る吉乃。

クオーツの王国 4話 BOMHATさん


 なんとか士官候補生になったブルー。王家の中も一枚岩ではないようです。一気にキャラが増えて、ますます楽しみです。

ヴィンランド・サガ 200話 幸村誠さん


 200話です200話。この作品が始まったのは週刊少年マガジンなんですが、たまたまその時期購読してたので読みました。その時はこんな巨編になるとは、幸村さん含め誰も予想しなかったと思います。おめでとうございます。

乾と巽 53話 安彦良和さん


 岩明均さん・ゆうきまさみさんと共に私が仰ぎ見るベテラン作家・安彦さんですが、この作品はもうひとつワクワクできませんでした。でも今回わりとよかったです(何様か)。最後のシーン、クレムリンでレーニンに会う巽。

2023/03/27

ピッコリーナ 1巻 大槻一翔さん


 妹と焼鳥屋を営む青年「朗」と、そっくりな見た目の仲間4人を引き連れてそこに通うバニーガール「峰香」の恋。ようやく単行本が出ました。


 大槻一翔さん。2014年12月の読切「噂話(下の画像)」でデビューされたと思います。いくつか読切を発表された後、17年3月のハルタ42号より連載「欅姉妹の四季」を開始。この号で始まった連載3作のうち掲載位置が最後で、当初私も気にしていなかったんですが、中盤以降の伸びが素晴らしかったです。大好きな連載になりました。


 その後担当編集さんについて行く形で青騎士に移籍、21年8月の青騎士3号付属小冊子「青騎士バニー」に収録の読切が「ピッコリーナ」第1話のベースになりました。当初の読切と連載1話として青騎士5A号に再掲されたバージョンでは峰香の顔立ちが異なります(タレ目がオリジナル)。

 この作品、バニーガールと焼鳥という組み合わせのシュールさも面白いんですが、やはり絵の魅力です。漫画の才能は美大卒であれば保証されるとは全く思いませんが、美術の高等教育をしっかり受けられた方でないと描けない領域の絵というのも存在します。流麗な線に目を奪われますが、線だけでいえばそれ以上の作家さんも複数いらっしゃいます。大槻さんの絵はそれに加えてデッサンや構図、そして絵全体の美しさががいいんですよね…。


 と、ここまで褒めましたが、ストーリー展開的に2巻以降、より面白くなるのか?というのはやや疑問で…恋物語って、不安・焦燥といったスパイスがないと物足りなくないですか。大槻さんのこれまでの作品を読んだ感じだと恋愛面の機微という面で不安があります。


 あと期待が大きかっただけに、装丁がちょっと残念ですね。デザインもですが、大槻さんのイラストも表紙・裏表紙ともに「急かされた」感があって。「欅姉妹の四季」の1巻を手に取った時、表紙や目次のイラストを見て「この人はコマ漫画より一枚絵の方が資質的に合ってるんじゃないか?」と思った記憶があります。青騎士7A号の表紙イラストを見れば分かる通り、もっと描ける方なんですが。


2023/03/26

ハルタ102号


 この号から税込748円→825円に値上げしたハルタですが、すさまじくお買い得であることに変わりはありません。みっっっちり中身詰まってます。

花園に幹が立つ 5話 野澤佑季恵さん

 34ページ中、見開きが2つあります。それだけでなくコマ割りや構図が激変と言っていいぐらい多彩になりました。話の方はラッキースケベ的シーンまであり…認めたくないけどやっぱりハーレム漫画なのか…。あっ11月に始まったばかりですが、早くも5月に単行本1巻が出ますので!

ことり文書 25話 天野実樹さん

 惜しまれつつも、いい空気を保ったままの晴れやかな最終話でした。やっぱり小鳥と白石の話だったんだなあ…と再認識。最終3巻は4月発売です(この機会に私も1巻からまとめ買いの予定)。

対岸のメル  7話 福島聡さん

 読切として発表された1話の時点ではまったく構想にはなかったと思うんですが、3億円の話とシャボン玉男をここで見事に繋げてきまして、このストーリーの構築力すげえ…と改めて脱帽です。

犬火の兄弟 1話 吉田真百合さん

 絵柄もずいぶん見やすくなって今度の連載はわりと明るい感じかな〜などと思っていた私が甘かったです。またも復讐譚!コアは全然変わらねえ!「ライカの星」と違い今度は短期集中連載ではないので、アンケート次第で長く続くかもしれません。

黒巫鏡談 2話 戸川四餡さん

 短期集中といえばこの作品も全3話です。八咫烏杯受賞の戸川さん。絵はまだまだと思いますが、ひと目でこの方とわかる個性がありますね。

生き残った6人によると 27話 山本和音さん

 巻頭でした。4巻最後で登場したトモコ・アンダーソン教授も溶け込みつつありますが、ゾンビ側にもヤバいのが登場で、モールを離れなければいけないかもしれません。

虎は龍をまだ喰べない。 20話 一七八ハチさん

 西の地を目指す白麗と碧童。ひさびさの水入らずかと思いきや邪魔者が。爬虫類率けっこう高いですね。アクションシーンがダイナミックで良かったです。

ダンジョン飯 92話 九井諒子さん

 4月で終わりということはなさそうですが、秒読みです。懐かしい魔物色々出てきました。

あかねさす柘榴の都 21話 福浪優子さん

 夏樹のモヤモヤ、晴れました。線が細くなった気がしましたがペンを変えたんですかね?

いやはや熱海くん 10話 田沼朝さん

 苦手と思った相手の別の一面。絵もここまで良くなれば安心して楽しめます。

ウスズミの果て 11話 岩宗治生さん


 最初の頃は同じトーンで淡々と続いてる感じでしたが、今回絵も話も動きがあって面白かったです。

2023/03/25

対岸のメル 幽冥探偵調査ファイル 1巻 福島聡さん


 2019年秋に連載が終わった「バララッシュ」。私は迷った末に1年近く経ってから単行本(全3巻)を買い、通して読みました。3巻の途中でページを繰るのを止めて、こう思ったんです。「ハルタに載った全作家の全作品中、いちばん出来がいいのって…これじゃないか?」福島聡さん、とにかく漫画の上手い方です。

 ともに小学生、お寺の息子の和気谷清春が不登校の白河メルと出会うところから物語は始まります。メルは題名にもあるように「対岸」の世界が視える巫女のような存在で、二人はコンビを組んで亡霊たちを成仏させるべく謎を解いていきます。

 福島さん、とても才能ある方ですがその才が走りすぎというか中二というか、読者視点ではとっつきにくさもありました。ですが「バララッシュ」はとてもストレートな青春ものでしたし、この「対岸のメル」もシンプルな少年少女の探偵物語として楽しめます(でも常に不穏さがつきまとうのが福島さんです)。

 個人的にこの作品の最大の魅力は絵ですね…掲載誌ハルタの事情なのかどうか年6回しか掲載されませんが、そのぶん丁寧に描かれてます。アニメーター志望(追記:アニメーター出身と当初書きましたが、調べ直したら私の勘違いでした。失礼いたしました)だった福島さん、手は速いのですがややガサガサした感じの線だったのが余裕を感じる作画に変わってます。

 なお、この作品は21年9月に第1話が読切として載り、翌22年3月から2話以降が連載になりまして、1話の最後の部分が雑誌掲載時と単行本で異なってます。初出では二人は大学生に成長してました(下の画像)。

2023/03/22

月刊アフタヌーン23年4月号


 「ヴィンランド・サガ」「波よ聞いてくれ」は休載です。

メダリスト 32話 つるまいかださん



 ホラー漫画でした…。読んでいてある漫画のタイトルが頭に浮かんできまして、「あしたのジョー」なんですけど。何が言いたいかというと、光は(少なくとも一時的には)物語から「消える」可能性があるなと思いました。だってこんなレベルで競い続けたら強さのインフレが物凄い事になってしまいます。


 同じコーチに指導される(と認識している)夕凪が抱いた思い。嫉妬だけでなく指導のあり方が違いすぎる、その違和感です。こういうところから綻んでいくのでしょう。

クオーツの王国 3話 BOMHATさん



 3年が過ぎ少し大きくなったブルーは天使になるための試験へ。仲間になりそうな男の子とかキレイだけど意地悪そうなお姉さんとか出て来ました。

最果てのセレナード 4話 ひの宙子さん



 4月21日に1巻が出ます。キャッチコピーが「激情サスペンス」なんですが、激情でしたね…小夜ママが。冬の北海道、その格好で大丈夫かと心配になる最後のコマ。