2025/06/07

ハルタ124号


 あまり「これ!」という作品がなく、書店購入特典「ちびきゃらフェローズ」の分を足してなんとか形になりました…昨年よりはマシになりましたが、やはり谷間の時期です。新連載は1作、終了はありません。

夜をととのえる 1話 浜田咲良さん


 「金曜日はアトリエで」で知名度が上がった浜田さんの新作。112号掲載の読切と近い、前連載とはけっこう違う絵柄です。大学に入ったばかりの悠馬という子が黒沢という子と個人宅にお邪魔しての清掃バイトを始める、というお仕事ものですかね(金曜日…も広い意味ではそう言えるかな)。

 あまり他の作品と比べてどうこう言うのは良くないかもしれませんが、私が読んでる中だと「ただの飯フレです」に近い感じかなと思うけど、そちらほど会話の妙のようなものは感じられません。ただ回を重ねていけば良くなると思います。期待します。

午前二時は食卓で 14話 今東ともよさん


 この連載、今までちゃんと読んでなかったですが、今回のヒキは「おっ」と思わされましたね…絵も少しずつ読みやすくなってきたのでは。

かわいすぎる人よ! 57・58話 綿野マイコさん


 同じ出来事を別々のキャラ視点で展開するやつです。中学生…キラキラしてますね。5月に3巻が出ましたが綿野さんも上手くなってきてますね。

極楽にはまだ早い 4話 天野実樹さん


 少しずつ雪成の心のうちも描かれるようになってきました。今回気づいたのは背景が「ことり文書」の頃より描き込まれてるんですね(アシさんだと思います)。もう少しシンプルでも…と思わないでもないコマもありますが、江戸の情景が伝わってきます。

香港ネクロポリス 3話 越谷美咲さん


 さすがに1話のような描き込みを続けるのは無理だったようですが、十分魅力的です。今回は幕間っぽい感じでした。

君の笑顔がいちばんすき 読切 三星たまさん


 ここからは書店購入特典、ちいか…じゃなくて「ちびきゃらフェローズ」の作品。三星さん「夜の名前を呼んで」から1年以上ぶりですね。相変わらずの可愛らしさ…と思ってたら最後が闇でした。

デリバリー宇ちゃん 読切 福浪優子さん


 私が入力時「ふ」と打つと最初に出てくることが多い福浪さんの、ちょっと毛色の変わった…なんとSF?新人さんの多いこの小冊子のトリにふさわしい安定感でした。デビュー作「ノウゼンカズラの家」も巻末掲載だったのをふと思い出しました。

2025/05/10

ハルタ111号


 この号は今東(こんどう)ともよさん「午前二時は食卓で」が新連載、浅井海奈さん「八百万黒猫速報」が最終話でした。そして書店購入特典「わんわんわん!フェローズ」。「犬」縛りでこれからの方・終えた方を含め連載作家たちが、普段と違う顔を見せてくれたゴージャスな企画でした。特に長蔵ヒロコさんは異色だったし飴石さんも完成度はイマイチながら違った印象でした。最初の2作品はそこから取り上げます。

テラコッタの温度 読切 樫木拓人さん


 クレジットがなかったら多くの方が樫木作品と気づかなかったと思います。いつもよりも写実的な絵、しかもSFです。画像のように表情の変化を複数コマで追ったりとか、「ハクメイとミコチ」ではほぼ見られない描写が新鮮でした。

首輪の女 読切 野澤佑季恵さん


 Xにポストされているイラストを見ていると、「花園に幹が立つ」よりもこちらの方が本来の野澤さんに近いのかな、という気さえしてきます。太陽の差し込まないフェティッシュな世界。

春日出はバスで眠る 読切 西田心さん


 まだ連載に至っていないハルタ作家さんの中でも、東金桜さんと並んで連載を読んでみたい西田さんですが、デビューからこの時点で4年近く経ってますので難しいのかな…。バスで眠るうちタイムスリップして、離婚した両親の初々しい10代の頃に触れる少年の話。確かな絵、押し付けがましくないヒューマニズム、いいです。西田さんは「バスジャック二度としない」というタイトルの読切もありました。

八百万黒猫速報 12話 浅井海奈さん


 続いてほしかったですが…ちょっと駆け足感もありましたが、ハッピーエンドです。いい作品をありがとうございました(年間ベストに2巻の感想を書いてしまったので書くことがない)。

開花アパートメント 10話 飴石さん


 夫を喪った静子と双子の姉を喪った八千代の静かな会話。毎度の感想ですが充実しています。単行本でまとめて読むのもいいんですが、B5の画面で読むのが贅沢なんですよ。

生き残った6人によると 36話 山本和音さん


 実は連載を追っていた時点ではホテル編に入ってから少し面白さが減じた感じもあったんですが、読み直してみるとやっぱりいいというか…山本さん上手くなられたなあと改めて感じました。この頃の槙はまだ本性現してないですね。

涙子さまの言う通り 12話 山本ルンルンさん


 妹を奪還すべく犬飼邸に乗り込む沢渡。終盤に活躍のヨネ子・ナッちゃんも出てきました。

2025/04/29

ハルタ123号


 新連載は池袋万里さん「心霊写真密売マニュアル」1作。丸山薫さん「司書正」は単行本作業のあおりで短かったですが今回も面白かったですね。

虎は龍をまだ喰べない。40話 一七八ハチさん


 深翠と黒蘭の…しっとりしていながら微かに不穏さが漂っている、そう…こういう話が私は読みたかったんです!ここのところ、あれこれキャラが増えすぎて読んでて疲れてました。そして卵!前回から卵が出てきたんですが今回、えっ?そうなるの?前回の後半があまりにも単行本ラストのヒキっぽかったので5月に出る5巻はここまでかなと思い込んでいましたが、スケジュール的には今回の可能性の方がありますね…どちらがラストかで単行本読者の読後感はかなり変わりそうです。

先生、今月どうですか 47話 高江洲弥さん


 5年弱前に始まったこの連載もここまで来ました…おそらく6月ぐらいで最終話です。この連載、始まって何回かは本当にすばらしい、私にとって特別な連載でした。今回私を魅了した第1話のシーンが今回繰り返されて…詳しくは言えませんが。先生、無精髭も最後のシーンもかっこいいじゃないですか!

香港ネクロポリス 2話 越谷美咲さん


 今回も絵がとても充実してて面白かったですよ。越谷さんちょっと緩めた絵も描けるようになって幅が広がりましたね。

極楽にはまだ早い 3話 天野実樹さん


 まだ3話目ですが、ずっと前からやっているような安定感。主人公・雪成の表情も変化が出てきて、少し「ことり文書」を思い出す瞬間もありました。

11番目のねこはねね 9話 はりかもさん


 ずっと「絵は達者なんだけど載せる雑誌まちがえてないか?」と思ってましたが、今回すんなり読めました。5月に1巻が出ますね。

瑠璃の宝石 35話 渋谷圭一郎さん/ハクメイとミコチ 122話 樫木祐人さん



 両作品、読み切りをはさんで連続しての掲載順で、なんとなく内容も被ってる感じだったので合わせての感想です。こういう作品同士の思わぬ相互作用って雑誌で読んでると時々遭遇する楽しみですね。特にハクミコは先月に続いて面白かったです。

狼よ、震えて眠れ 7話 犬童千絵さん


 6月に単行本1巻が出ます。派手さはないんですがfellows!初期からのキャリアを感じさせます。犬童さんや高橋那津子さんのような生え抜きの作家さんはハルタの宝です。

24年に買って良かった単行本10冊


 24年は新規開拓がはかどらず、23年のベストとあまり変わりばえしないラインナップになっちゃいましたかね…相変わらずハルタ系メインです(購読しているアフタヌーンの単行本が1冊だけというのは自分でも意外でしたが)。10作中、2巻が6冊というのは期せずして、です。

10位 夏目アラタの結婚 12巻 乃木坂太郎さん


 掲載誌のスペリオールがどんどん自分の好みから遠ざかっていって、連載のクライマックスはこの単行本で読む形となりました。最終巻になってもまだ明らかにされる謎…ストーリー構成と画力の両面で最後までダレず読者を圧倒させた、凄い作品でした。実写映画化もされましたがあまり話題にならなかったのは残念。

9位 エイタパ・ニーチ協奏曲 2巻 あべまりなさん


 この方も青騎士で知ったので、広い意味でハルタ系。ふんわり緩いファンタジー…という路線は1巻と変わらないんですが、ペンタッチが細やかに的確になり、構成も含め着実に漫画が上手くなりました。緩いと書きましたが、ただ緩いだけではないですね。現在連載中の「ルエント幻獣調整師」はよりマニアックな感じですが大丈夫なんだろうか…まあ「あすか」自体あまり売れてる感じじゃないし、いいのか…いいのか??

8位 ピッコリーナ 2巻 大槻一翔さん


 絵の美しさにますます磨きがかかっている…のはいいのですが…薄々わかってはいましたが、ストーリー作りが苦手なのがはっきりしてしまった大槻さんです。でもいいんですよそれは!ついていきます!と思っていた矢先の2巻で終了(大人の事情)…やっと人気が広がってきたと思ったのにぃっ…。

7位 私のブルーガーネット 1巻 秋山はるさん


 2巻のみと短命に終わった「イベリスの花嫁」の後、白泉社メロディに移籍しての1巻。前作の苦味というか閉塞感(いい意味で)は少し薄れて、少なくともこの巻では車窓から入り込む潮風のような(そういうストーリーです)爽やかさも感じます。今作、前よりもセリフが磨かれたというか、決めのシーンで印象的に入ってくるんですよね。編集さんが変わったせいなんでしょうか。隔月誌なので年1ペースですが(そういえばこの年間ベストはスローペースな作品が多い)ぜひ3巻4巻と続いてほしいです。

6位 花園に幹が立つ 3巻 野澤佑季恵さん


 私のエコヒイキ作家さん。連載後半はこちらの事情であまりちゃんと楽しめず、単行本で通して読むことで良さを噛み締めることができました。登場人物たちの気持ちを丁寧に掬い取ってましたし、言うまでもなく絵が素敵です。野澤さんって話の組み立てがどこか理屈っぽいところがあって、そのせいなんでしょうか今いち人気が広がらないんですが、私は応援してます!この連載ですごく成長したと思います!次の連載も待っております!

5位 司書正 2巻 丸山薫さん


 23年のベストにも入れてまして、どうしようかとも思いましたが…入れざるを得ないです。なんたって面白いですから。この巻、衝撃の展開というよりはタメの巻という感じですが、空間的・時間的な拡がり・厚みが出てきました。最近出た3巻もけっこう話題になってるようですし、ぜひこのまま順風満帆で行ってほしい…。

4位 贋 まがいもの 2巻 黒川裕美さん


 あーこれも入れるしかないわあ。「夕凪に舞え、僕のリボン」も評判は悪くなかったと思うのですが部数的にはさほどでもなかったのかな?ですが今作、勢いがついてきたんじゃないでしょうか!1巻の、追い込まれてやむなく贋作を…という心境が、この2巻の最後の方では変わりはじめてます、はっきりと。絵も1巻以上にいいんですよね…でも(3巻収録分の)連載の現在形はやや淡白な絵になってきてるのが少し気がかりです。

3位 八百万黒猫速報 2巻 浅井海奈さん


 この作品、連載前半はなかなか調子に乗れずもどかしさを感じていたのですが、この2巻で浅井さんの絵は大きく花開いたと思います。前に書いた感想の繰り返しになりますが、本当に他の誰にも描けない彼女だけの絵なんですよ。ストーリー面でも、追う側と追われる側の狭間で葛藤する主人公というのは初連載の「藍鉄とポピー」とも共通していますが、より生々しく凄絶なものになっています。そして不知火の凶々しい美しさよ…!商業的にウケるかというと正直厳しいのかもしれませんが、残ってほしいなあ浅井さん…。

2位 ホテル・ローレルの渡り鳥たち 2巻 赤河左岸さん


 最近メインエンジンが剥がれてどこかへ飛んでいった青騎士ですが、その創刊で私が得られた最高のものの一つがこの作品だったのかな、と思います。1巻の時から絵は素晴らしかったのですが、なかなか話の構造がわかりませんで、途中で絵だけなのかよこの作品…と思ったりもしました。しかしこの2巻後半で見事にパズルのピースがつながりまして!うわぁ…改めてこれは傑作でした!話題になってない様子なのが不思議というか…もったいないですね。

1位 ヒストリエ 12巻 岩明均さん


 実質的に最終巻、ということになります。展開的にも中身の詰まりまくった巻でした。私は9巻のあたりで一度線が細くなって絵に躍動感がなくなってきてないか、と少し不満を感じていたんですが勘違いでした、この12巻で岩明さんが到達されたレベルを目にしてしまうと。何年も前からネットでは描けないなら別の絵師さんに描いてもらえとかずっと言われてましたが(AIうんぬんなんて声さえあったような)、もしそうなったとしても私は読みません。いや、そりゃ岩明さんが描かれた続きが読めるものなら読みたいですが。

2025/04/07

ハルタ122号


 軽くボヤかせていただきますが、いま奇数月(3・5・9・11月)の号は読み応えがないんです…現在本誌連載では最も楽しみにしてる「開花アパートメント」「司書正」が載ってない。面白い連載が減ったなあ…と痛感しますが、新しい連載が生まれ育つのを待ちましょう。

極楽にはまだ早い 2話 天野実樹さん


 前回の感想で「雪成と佐一郎の物語」と書いたんですが、今回佐一郎くん出番0コマでオッサンが出てきました。拷問シーンは惨いですが、それとのコントラストで雪成の涼やかな佇まいが一層引き立ちます。「ことり文書」からは想像できないコマもあったりして、天野さんやる気ですね。

香港ネクロポリス 1話 越谷美咲さん


 短期で終わり単行本も出なかった「冥府が来た!」以来の連載。その頃のハルタ巻末には次号予告漫画「ユキと小春」というのがあって、そこで取り上げられてましたそういえば。中国に返還される少し前の香港が舞台。「冥府…」と比べて大幅に画力が上がりましたがオカルトな読み味は変わらず、これからの成長に期待です。

ハクメイとミコチ 121話 樫木祐人さん


 一度しか出てなかったと思うんですが印象に残るキャラ、ひきこもり研ぎ師のハルシナさんとお馴染みイワシ親方の組み合わせ。こういう脇役同士の話というのも近年増えてきました。絵が上手いというのは勿論ですが、樫木さんの脳内で「こういうキャラ」というのが確立してるので少ないページ数ながら満足度が高いです。九井諒子さんもそういうタイプだと思うんですが、仕事だから人格を造形するというより自然にできてしまうんでしょうね。ハルシナの「他人と関わるのはイヤ、でも自分の仕事がどう見られるのかは知りたい」という性格が画像の2コマで伝わってきます。

いやはや熱海くん 30話 田沼朝さん


 個人的に好きなキャラ辻くんに忍び寄る女子!ですがこの子もいい味出てますね。田沼作品には珍しい?陽キャくんもいつの間にか溶け込んでます。

虎は龍をまだ喰べない。 39話 一七八ハチさん


 白状しますとハルタの感想を休んでた24年の間に私の中での優先順位が少し下がりまして…「土龍?火龍?じゃあ次は木龍金龍かよラーメンかよ」という感じにもなってたんですが、今回また緊張感のあるヒキでした。5月には5巻が出ますね…4巻を積んでたので読まないと。

船長、問題ありません!1話 佐藤宮さん


 第1回八咫烏杯受賞者でありながら色々あったせいか掲載が途絶えていた佐藤さんのタイムスリップ転生もの。ふたつ気になったのが何故タイムスリップしたかの説得力が弱いこと・毎号連載なのに1話の時点ですでに絵が隅々まで行き届いていない(主に後半)こと。光るものは持たれている方だと思いますので今後どうなるかですね。

魔女のエデン 26話 ゆめじさん


 意地の悪い揚げ足取りの感想になりますが「ご慈悲」はないでしょう普通…と思いました。ただ考えてみると、ゆめじさんは日本在住の日本人の方だったかと思うんですが、契約されてるのはフランスで日本のMANGA を手広く(集英講談小学なんでもあり)翻訳出版しているKi-oonという会社で、ハルタの編集さんが日本語をチェックできる体制ではないのかもしれません。単行本は日本でも5巻まで出て物語に厚みが出てきて、最後のシーンとか良かったです。

2025/02/23

ハルタ121号



 新連載と終了する連載が1本ずつ、バランスのとれた?号ですね。次号は長蔵ヒロコさん休載というのが残念です。111号以来の(一部)書店購入特典「シガレットフェローズ」も入手できました。そちらに掲載された福浪さんの作品から感想を書いていきます。

「煙草の先生」 読切 福浪優子さん


 6ページと短いのですが、久しぶりに福浪作品を紙で楽しめました。高齢女性を描く中に若かった姿が挿入される構成はデビュー作「ノウゼンカズラの家」と同じです。顔の皺の描き込みとかカケアミの多用とか、時間をかけて楽しんで描かれた感じでとてもいいです。セリフにある「授業でよく手を挙げてた」のはなぜか、回想シーンの様子で読者に想像させるあたりが実に福浪さんらしい。

開花アパートメント 16話 飴石さん


 このハルタの感想も1年間書いてなかったわけですが、その間連載を読んでいて感じていたのは絵の変化でした。初期の木版画や切絵を思わせる絵から次第にペンの濃淡で空間の奥行きを感じさせるようになってきたと思います。

 今回の話、最後のセリフのために全てが積み上げられた感があるんですが、その積み上げの各パーツが素晴らしいですね…4月に出る3巻を手に取って今の充実ぶりをまとめて味わうのが楽しみです。なお、飴石さんは「シガレットフェローズ」にも短編を掲載されています(表紙も飴石さん)。

涙子さまの言う通り 15話 山本ルンルンさん


 衝撃の第1話から、時々まだかまだかと焦らされながらずっと楽しませてもらった連載もとうとう最終話です。内容についてはあえて触れません…3月に最終3巻が出ますのでお楽しみに。ありがとうございました。

司書正 24話 丸山薫さん


 こちらも3月に3巻が出ます。司書正さまピンチ!今回また出版できる国・地域が限られそうな場面が…。

 ほぼ関係ない話ですが先日70年代アニメ「未来少年コナン」を久々に観まして、最終話でヒロインのラナが意識を鳥に乗り移らせる場面でキビの能力を連想しました(年齢や髪型も近いので)。

極楽にはまだ早い 1話 天野実樹さん


 命を奪う側・処刑人の雪成と、救う側・医者の子佐一郎の物語。天野さんの新連載を楽しみにされていた方は多そうです。その一人として読んでみて、現時点ではつまらなくはないんですが面白い!とも言えないかな、という感想です。

 前の連載「ことり文書」を振り返ると、小鳥をはじめとした登場人物たちの多彩な表情が大きな魅力だったと思うんですが、今回の主人公・雪成はほぼ無表情です(佐一郎は表情豊かですが)。天野さんの意欲は感じるので、これからどうなるかですね。

クプルムの花嫁 48話 namoさん


 じーちゃんと!ばーちゃんの!若き日々!なかなか読ませる話でした。

現象X 3話 温泉中也さん


 ストーリーは良くできてると思います。名のあるアニメーターさんに失礼かもしれませんが、絵に生気が感じられず、そこが残念です。

スノードーム 読切 栗山葉月さん


 ハルタ新人賞の八咫烏杯もインパクトを感じなくなってましたが、この受賞作は「おっ」と思いました。ストーリーというのがほぼ無い、良くも悪くもポエムなんですが…それがいい。技術的には未熟でも描こうとしてる世界、全体の雰囲気、好きです。こういう黒の比率が多い作画は(特に新人さんには)アナログだとハードルが高いと思うんですが、デジタル作画のメリットですね。

2024/02/26

23年に買って良かった単行本20冊


 2023年の単行本、とても充実していたと思います。こうして並べると意外性のない結果ですが。年後半あたりから思うようになったのは、私が好きなのはペンタッチや線が綺麗でデッサン・構図がしっかりした、そしてできればアナログ作画のものなんだよな、ということです。

20位 犬とサンドバッグ 2巻 尾崎かおりさん

 1巻はやや期待外れだったのですが、2巻は良かったですね。ベテランさんが積み上げてきたものをあらためて確認する感じ。作画もアフタヌーン時代より丁寧でした。

19位ことり文書 3巻 天野実樹さん

 とにかく手触りのいい、読んでいて幸せな連載でした。この3巻は特に絵の向上がめざましかったです。いい形で伸びてほしい…。

18位 ただの飯フレです 2巻 さのさくらさん

 少しずつweb連載からの単行本を購入というのも増えてきました。さのさくらさん、私はX(Twitter)で知りまして、一枚の絵に落とし込む表情とかセリフのセンスが好きでした。この連載、1巻の時は評判もいいし試しに買ってみるか→ふ〜んという程度だったのですが、2巻になってXでの、必ずしも明るいばかりでもない人生の瞬間を切り取る感じが染み出してきてて、良かったですね。実は2巻を買おうか迷ったんですが買って正解でした。

17位 花園に幹が立つ 2巻 野澤佑季恵さん

 1巻が出たときの感想でも書きましたが、この2〜3年の新人さんの中で最も期待してました。この2巻で着実に成長されて、野澤さんのスタイルというのが見えてきた感じですね。それは良いことなんですが、一方でズドンと大化けする可能性は狭まったなとも思います。これからも楽しみにしてますが。

16位 涙子さまの言う通り 2巻 山本ルンルンさん

 大ベテランでありながら、この作品でのルンルンさんの変貌ぶりというのは、考えてみればすごかったですよねえ。連載はこれから山場に駆け上がっていくのですが、掲載ペースが予測できないのも込みで、ドキドキです。

15位 イベリスの花嫁 2巻 秋山はるさん

 22年の年間ベストでも1巻が5位でしたが、しつこく23年も入賞させます。この作品に関してはとにかく内容に比しての世間の反応のなさに、ひたすら納得いかないですねえ…うーむ。「大人百合」らしいですが、そーいうジャンルなんかどうでもいいから、とにかく読んでよ!と言いたいです。

14位 アビスアジュールの罪人 3巻 冨明仁さん

 これも打切りが残念無念な…8位のもそうですけど。この作品、読めばわかりますが、映画や演劇でいうところの「美術」つまり背景や衣装がものすごい入念に準備されていて本当にすごいです。そして冨さんの画力に加え、従来ややお留守だったストーリー展開も読み応えあり、つくづく続いてほしかったです。冨さんまたハルタで描いてください!

13位 宝石商のヒストリティカ 3巻 佐々木つかささん

 ハルタから別れての「青騎士」創刊宣言から3年。いちばん嬉しい誤算は若手・新人さんたちの成長のめざましさで、私の主観ではその代表が佐々木さんでした。開始時点ではけっこうクセのある絵がどんどん成長し洗練されていくさま、雑誌で追ってく醍醐味なんですよね。内田善美さんすらどこか連想させる、偏執的なんだけど美麗な描き込み。

12位 開花アパートメント1巻 飴石さん

 同時にデビューされた野澤佑季恵さんと比べてしまう癖がついてます。連載を読んでる時点では野澤さんの方が楽しいのですが、単行本としては飴石さんに軍配が…これは1巻未収録の、最近のエピソードが良かったのも影響しています。単に絵が上手いだけでなく、ストーリーテリングでも才能を「開花」させつつある飴石さん。装丁の素晴らしさも加点要因。

11位 東京ヒゴロ 3巻 松本大洋さん

 23年の年間ベストでは2巻が1位でした。連載を読んでいた時点では3巻で完結という尺にも予定調和な結末にも納得いかず、松本さんの健康状態のせいだろうか…などと思っていたのですが、最近ネットでの松本さんインタビューなんかを読んでしまい、今はなんとも言えなくなっています…私などがいまさら言う事でもないですが、本当にいい作品をありがとうございました。

10位 守娘 2巻 小峱峱(シャオナオナオ)さん

 私が単行本を買うのは雑誌連載で気に入った作品が大半で、見ず知らずの作家さんの本に手を出すのは稀なんですが、この作品は手を出してみて本当に良かったです。漫画としてはこなれてないところもありますし海外(台湾) 作品故の距離感もありましたが、絵が上手いだけでなくメッセージ性もあって。長く読まれてほしいです。

9位 メダリスト 9巻 つるまいかださん

 ひとつ前の8巻と対をなす、ノービスA全国大会編。とても面白かったです。面白かったけど…読み進むうち100%好きな作品にはなりきれないなと悟った、節目の巻でもありますね。この巻の焦点は司・いのりの師弟が光の牙城をどう崩すかにあったわけですが、薄々感じてはいたけどこの師弟が熱血すぎて個人的にあまり響かなかったです。私にとってはこの巻はあくまでも亜昼美玖なんです…ああ、あひるの子…。

8位 対岸のメル 2巻 福島聡さん

 2巻で終わってしまったのが、本当に惜しくてなりません。今までの福島さんの連載で絵も内容も一番だったと私は思います。唯一無二、としか言えないですね…次回作、心待ちにしております。

7位 贋 まがいもの 1巻 黒川裕美さん

 とにかくこの巻は待ち遠しかったです。黒川さんが寡作であるというのもありますが、連載されているWeb雑誌「ハルタオルタ」上での画質が満足いくものでなく。無料とはいえ中々のストレスで、紙で読めてほっとしました。日本画という題材こそ珍しさはありますが筋立ては結構ベタで、でもそれがいいんですよこの作品。経済的には報われない絵の世界に生きて、ご自身や周りの方もいろいろな思いをされてきたと思いますが、それがじわっと滲み出てくるような。

6位 最果てのセレナード 1巻 ひの宙子さん

 23年内に2巻も出てそれも面白かったのですが、衝撃度で1巻を選びました。ネットで他の方の感想を拝見して「セリフがわかりにくい」というのがあったのですが、そのわかりにくさギリギリのところで紡がれる言葉、そしてコマが連なって作られる作品世界が魅力です。連載を読んでいて最初の頃は短ければ2巻で終わるか?などと思っていたのですがどっこい、4巻か5巻までは行きそうです。

5位 ピッコリーナ 1巻 大槻一翔さん

 伸びてほしい売れてほしいと思ってきた若手さんの一人。この1巻がそこそこ評判になり嬉しいです(3月には2巻目が出ますね)。緻密に設定や展開を考えて始めたとは思えませんが今のところ結果オーライです。なんといっても美しい線!惚れ惚れします。

4位 ダンジョン飯 14巻 九井諒子さん

 いまさら説明不要の堂々完結巻です。読み返すと最初の頃はやや頼りなさもあった絵、9年間の積み上げで本当に盤石になり…(巻末にアシスタントさんへの謝辞もありましたが)背景も時期によって結構変わっていたのが後半数巻はビシッと安定して。スラスラ〜と読めちゃいますがすごいですよこれ。イヅツミが各人と話すことで各々の道が定まっていく話、繰り返し読んでます。

3位 帝都影物語 3巻 比嘉史果さん

 この3巻はひたすら愛おしくて、捨てられません。ググッと成長されて絵の魅力が極まりました。コミックナタリーの「ハルタWeb原画展」に3巻からのカットが比嘉さんの解説付きで紹介されてますが、ここまで考えて描かれてるんだなあ…と軽くショックでした。

2位 司書正 1巻 丸山薫さん

 絵も素晴らしいのですが、時間をたっぷりかけて練り上げた世界観、全貌が見えてこない謎の奥深さが最大の魅力です。連載が載っているハルタ、絵は強いのですがストーリーでぐいぐい引っ張るタイプが少ないのが弱点です。そういう面でもこの作品の存在はありがたいです。

1位 あかねさす柘榴の都 3巻 福浪優子さん

 ペンタッチ・構図の美しさ・セリフや表情の切り取り方。そしてどちらかというと「乾いた」心理描写だったのがだんだん内面に踏み込んでいった、この巻での作風の変化…とにかく好きで。本当に連載でこれを追えて素晴らしい装丁の単行本でも愛でられて、幸せでした。