2023/01/12

キラキラとギラギラ 1巻 嵐田佐和子さん


 「少女漫画 meets 劇画」なこの作品ですが、あまり内容を詳細に話すと読む方の楽しみを削いでしまいそうなので、嵐田さんの過去作と比べながら書いていきます。


 2011年に始まった「鋼鉄奇士シュヴァリオン」はかつて地球の危機を救ったものの、変身が解けなくなって邪魔者扱いされるヒーローの物語でした。この頃から絵は上手かったですが、漫画としてめっちゃ面白かったとまではいえません。


 16年開始の「青武高校あおぞら弓道部」は高校の屋上で一人で始めたヤミ弓道部が成長していく話でした。前半は(たぶん嵐田さんの個人的な事情から)短いページ数の回が続いたり、なかなか軌道に乗らない感じでしたが、後半の成長は素晴らしかったです。


 前2作の蓄積の上に始まった「キラキラとギラギラ」。異なる画風の混在というアイデアは前からありましたが、飽きられず面白さが継続するというのがこの作品の凄いところです。過去作と比べても一話ごとの抑揚、コマごとの見せ方が大幅に良くなって、安心して楽しめます。


 ただ連載で読んでいて少し気になるのは、劇画部分の(良い意味での)荒々しさがだんだんマイルドになってきたな…と。ただこれは意図的にそうしている(双方の画風が収斂していく)可能性もあります。


 内容と関係ないですが、過去作の装丁はマットな質感の紙を使っていたのに今回普通の紙なのが残念ですね。もうこの値段で贅沢はできなくなってきたと言うことなんでしょうが。

2023/01/05

メダリスト 7巻 つるまいかださん


 私が読んでいる連載の中でも画面から感じる輝きという点で最高度の作品です。これから読んでみようかなという方がいたら伝えたいのは「つまらないと切るにしても1巻は早いよ、もう少し読んでね」ということです。成長がすばらしいですから。



 フィギュアスケートを始めた年齢の遅さから成功を掴めなかった青年「司」が、かつての自分と似た境遇の少女「いのり」のコーチとなり共にメダリストを目指す物語ですね。2人はわずか1年で(ジュニアより低年齢の)ノービスAのブロック大会を制し、連載では全国大会が始まりましたが、この7巻は大会の狭間の修行ターンで前の6巻と比べやや地味です。


 「メダリスト」といえば…の「連写」カット。これはデジタル作画でないとほぼ無理でしょう。他にも多数出てくる選手たちの描き分け、動きのある滑走シーン・思い切って崩した絵のコメディシーン・リリカルなシーンが連なって作られるリズム、と見どころは多いです。


 この作品で面白いのが登場人物の独特なネーミングですね…普通こういった女の子たちに「小部田(こぶた)」「大蜘蛛」とかつけませんよね。担当さんと笑いながら作ってるのかと思ったらつるまさん単独のようです。

2023/01/03

1978年のまんが虫 全1巻 細野不二彦さん


 知らないと言う方はまずいないでしょう、細野不二彦さんの10代と20代の境目の日々。煩わしくとも避けられない家族との関係と共に、(作中では丘の上大学という名称ですが)慶應大での美樹本晴彦さんらとの交流や「スタジオぬえ」での活動を経てプロデビュー、そして少年サンデー掲載直前までが描かれています。



 細野さんのデビュー作「クラッシャージョウ(高千穂遙さん原作)」を私も目にはしてたはずなんですが、ちゃんとした記憶がないんですよね。サンデーで活躍されていた時もどちらかといえば苦手にしてました。「青空ふろっぴぃ」だけは少年に混じってサッカーをしようとする少女を現在の女子サッカーとの関連で「早かったな…」と時々思い出しますが。青年誌にフィールドを移されてからは「ママ」「BLOW UP!」「電波の城」等は好きでした。


 細野さんがデビューされた「マンガ少年」は私が自分で購読(親の金でしたが)し出した最初の漫画雑誌で、先日相次いで訃報が届いた御厨さと美さん・聖悠紀さんも載っていた時期がありました。後継誌の「DUO」は青少年誌・少女誌の垣根を超えた誌面作りがコンセプトで、現在のハルタなんかはその流れにあると思います。


 この手塚さんの本も持ってました私…細野さんが大学生だったこの時中学生でしたが…だんだん自分語りになってきましたが、記憶を呼び覚まさざるを得ない作品なんです。チラチラ入ってくる時代の風俗も懐かしくて。


 物語は父の死を経て読切「恋のプリズナー」のネームをサンデー編集部に持っていくところで終わります。その作品が別の青年にショックを与えたりもする訳です(最後の画像は島本和彦さん「アオイホノオ」)



2022/12/31

青騎士11B号


 青騎士へのグチをもう少し続けますと…ハルタの3割くらいなんだよなあ満足度が…。もう2年近く経ちますし、いつまでも発展途上だからと甘やかしてもいられません。

ホテル・ローレルの渡り鳥たち 5話 赤河左岸さん


 1話の時点で薄々わかっていましたが、死者が訪れるホテルです。今回悪くはなかったですが始まった時の素晴らしさと比べると薄いのは残念です。

宝石商のヒストリティカ 10話 佐々木つかささん


 数年経ち、ジャンヌも大人になりましたが…後半物語が動きましたね。2巻で完結なんですかね…。

北北西に曇と往け 9話 入江亜季さん


 友人・清と餃子パーティーからバディ結成へ。ペンに迷いがない感じです。

音盤紀行 話数不明 毛塚了一郎さん


 9号で始めた前後編の後編です。1号空けて作られたのにもうひとつでしたね…雰囲気は好きですし売れて良かったですが、ストーリー作りが課題じゃないでしょうか。

青騎士11A号


 A・BともにBe-conさんのイラストで「あれ?」と思いましたが、どちらにも「お姉さまと巨人」が載ってました。

 10号もそうだったんですがA号とB号の不均衡が…Aからは2作品です。「ピッコリーナ」単行本が出たらAは買うのやめようかな…と考え始めています。コストよりも収納スペースがね…紙で青騎士を読まれてる方の多くが直面している悩みと思いますが。

ピッコリーナ 8話 大槻一翔さん



 水族館デート中。絵が連載開始以来ベストでした。ただ作中にワタアメが出てくるんですが、そういうフワンフワンした感じで。それを楽しむべき作品かもしれませんが、もう少し体重・体温みたいなのも欲しいなと思いました。デートはまだ続きます。

城い糸 読切 柴田康平さん


 「夜な夜な夜な」も載ってはいますがオマケ的なショートで、メインはこちら。ファンタジーですが出てくる蜘蛛の名前が、なぜ「メタリカ」?

 久慈光久さん「鋼鐵の薔薇」も載せようかと思ったんですが全年齢ギリギリの内容でやめました。

2022/12/30

月刊!スピリッツ23年2月号


 私にとって(たぶん)最後の月スピ。1年ちょっと前から「イベリスの花嫁」開始とともに始まった(何度目かの)購読でしたが、連載が終わりましたのでね…。

イベリスの花嫁 11話 秋山はるさん



 本当に名残惜しいのですが、素晴らしい最終回で、読めて幸せです。秋山さんありがとうございました!2巻は1月12日頃発売予定で、カバーイラストも美しいです。

犬とサンドバッグ 7話 尾崎かおりさん


 先日書いた(ちょいネガティブな)1巻の感想が思ったより読まれてて少し焦ってましたが、今回は面白いです!表情がふっ切れてて!島で吹かなかった薫風が思いがけず銀座で吹きました。

暗殺後宮 16話 緒里たばささん


 暁星の剣舞の相手は刺客でした…単行本3巻は当初1月の告知があったのですが、後ろにズレるようです。

2022/12/29

2022年に買って良かった単行本10+1冊


 タイトルのまんまですが、22年に出た単行本から私が買ったせま〜い範囲でのまとめです。

10位 リボンと棘 高江洲弥作品集


 21年のベストは「先生、今月どうですか」1巻だったんですが、今年出た巻は入っておりません。ですがこの作品集は嬉しかったですし、中身の詰まった1冊です。

9位 ダンス・ダンス・ダンスール 23巻 ジョージ朝倉さん


 今年はアニメ化のおかげで紙の既刊が買えるようになったし、連載もずっと面白かったです。最新刊は24巻ですが、潤平と夏姫が結ばれた23巻を選びました。

8位 ヴィンランド・サガ 26巻 幸村誠さん


 188話「ヒルドと森の神」が素晴らしいです。正直幸村さんがこういう話を描かれるとは思ってませんでした。次の189話も異色でしたし191話のカタルシスと、高水準です。

7位 ジーンブライド 2巻 高野ひと深さん


 ランキング等でも注目されました。面白いし考えさせられます。高野さんご出産とのことで3巻は少し先になりそうです。

6位 夏目アラタの結婚 7巻 乃木坂太郎さん


 28日に出た9巻も衝撃展開ですが、それは連載読んでたんで。個人的にはまっさらで読んだこの巻がとにかく衝撃でした。暗黒の輝き。

5位 イベリスの花嫁 1巻 秋山はるさん


 もっと話題になってしかるべき作品だったんですが…たぶん4巻ぐらいの尺で考えられてたと思うんですが、1月に出る2巻で完結です。いや惜しいな。

4位 虎は龍をまだ喰べない。 2巻 一七八ハチさん


 一方こちらは予想以上に注目を浴びて、嬉しいです。いやほんとに先が楽しみ。

3位 あかねさす柘榴の都 2巻 福浪優子さん


 重版はまだのようですが少しずつ読者が広がっている模様。いい作品になりました。

2位 生き残った6人によると 4巻 山本和音さん


 連載で読んでたのに単行本で再び楽しめました。23話「幕張の海」は記憶に残り続けるでしょう。

番外 石の花 5巻 坂口尚さん


 さすがに40年近く前の作品をランクインできませんが、この再刊はありがたかったですよ、高かったけど。一生ものです。

1位 東京ヒゴロ 2巻 松本大洋さん


 ちょっとつまらない結果かもしれませんが、やはりこれかな…これはやっぱり紙で読むべきだなと個人的には思います。